制度解説

キッチンカー開業の補助金|車両は対象?費用と探し方を解説

キッチンカー開業の補助金|車両は対象?費用と探し方を解説

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「キッチンカーの車両代300万円を補助金でまかなえないか」——この発想で検索した方に、最初に正確な結論をお伝えします。国の主要補助金では、車両本体の購入費は補助対象になりにくいのが実態です。ただし、車両を改造してキッチンカーにする工事(艤装)や厨房機器・チラシなどは対象になり得ますし、自治体独自の補助金には車両本体まで対象にする例があります。筆者は飲食店の開業・業態転換と補助金採択(事業再構築補助金)を自ら経験した元銀行員として、「何が対象で何が対象外か」を公募要領の原文ベースで整理します。

この記事で得られること
– キッチンカー開業費用の内訳と相場観(車両・艤装・許可・運転資金)
「車両本体は対象になりにくい」の正確な根拠と、対象になり得る経費の切り分け
– 車両本体まで補助する自治体独自支援の実例と探し方
– 営業許可の基礎(2021年食品衛生法改正・給水タンク容量・許可の広域化)
– 固定店舗と比較したときのキッチンカーの向き不向き

結論を先に
1. 持続化補助金の公募要領には、補助対象外の車両として「キッチンカー」「キッチントレーラー」が名指しで明記されている
2. 一方、同じ公募要領で「移動販売等を目的とした車の内装・改造工事」は補助対象の例として明記。厨房機器・チラシ・看板・メニュー開発も対象になり得る
3. 車両本体を支援してほしいなら自治体独自の補助金(例: 久留米市・南房総市)と創業融資の組み合わせが現実解

キッチンカー開業の費用構造|何にいくらかかる?

キッチンカー開業費用の5大内訳の図解

まず「補助金で何を軽くしたいのか」をはっきりさせるために、費用の構造から見ていきます。

費用項目 目安 内容
車両本体 100万〜300万円程度 軽トラック・バンの新車/中古。新車の軽トラベースで250万〜300万円程度とされる
艤装(改造・厨房設備) 50万〜150万円程度 シンク・給排水タンク・換気・電源・カウンター等の造作。業者依頼で100万〜150万円程度、DIYなら圧縮可
営業許可・登録 1万〜3万円程度 保健所の営業許可申請(例: 東京都の飲食店営業〈移動〉は新規9,300円。固定店舗の18,000円とは区分が異なる)+食品衛生責任者講習
備品・初期在庫 30万〜50万円程度 調理器具・容器・食材・のぼり等
出店料・運転資金 月商の3か月分目安 出店料は売上の10〜20%または日額固定が多い。開業直後の赤字に耐える資金

総額の相場は250万〜500万円程度という公開情報が多く、固定店舗の飲食店(1,000万円超が珍しくない)より初期投資はかなり軽くなります。金額は複数の公開情報(モビマルキーコーヒー喫茶店開業ナビ等)に基づく目安です。

ここで押さえてほしいのは、費用の7〜8割を「車両本体+艤装」が占めるという構造です。だからこそ「車両は補助金で買えるのか」が最大の関心事になるのですが——ここに正確な理解が必要です。

【核心】車両本体が補助対象になりにくい理由|公募要領を読む

補助対象になり得る経費とならない経費の切り分け図解

公募要領には「キッチンカー」が対象外として明記されている

小規模事業者がいちばん使いやすい持続化補助金を例に、一次情報を確認します。第20回公募の公募要領(第8版)は、補助対象外となる経費として「自動車等車両」を挙げ、その例に次を明記しています(P.19)。

自動車/フォークリフト/キッチンカー/除雪車/キッチントレーラー など

つまり「車両はダメらしい」という伝聞ではなく、キッチンカーそのものが名指しで対象外とされています。機械装置等費の項でも、自動車等車両は原則対象外(ブルドーザー等の「機械及び装置」区分に該当する自走式作業機械のみ例外)と整理されています(同P.12-13)。

背景には、車両は事業以外にも使える「汎用性の高い資産」であり、補助金の目的外使用を防げないという考え方があります。これは持続化補助金に限らず、国の補助金に共通する原則です。

一方で「車の内装・改造工事」は対象例として明記されている

ここが本記事でいちばん伝えたい切り分けです。同じ公募要領の「⑧委託・外注費」の対象となる経費例には、次の記載があります(P.17-18)。

店舗改装・バリアフリー化工事/(中略)/移動販売等を目的とした車の内装・改造工事

つまり、車両本体の購入はNGでも、手元の車両をキッチンカーに仕立てる艤装工事は補助対象になり得るのです。整理すると次のようになります。

経費 持続化補助金での扱い 経費区分
車両本体の購入(新車・中古) 対象外(公募要領P.19に明記)
車の内装・改造工事(艤装) 対象になり得る(対象例に明記) 委託・外注費
厨房機器(コンロ・冷凍冷蔵庫・ショーケース等) 対象になり得る 機械装置等費
チラシ・看板・SNS広告・のぼり 対象になり得る(上限30万円・広報費のみの申請は不可) 広報費
新メニューの試作開発(原材料・パッケージデザイン) 対象になり得る 新商品開発費
ガソリン代・車検費用・駐車場代 対象外

※対象になるのは「販路開拓の取り組み」としての計画に位置づけられた場合です。最終判断は公募要領と事務局確認によります。

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

私が融資審査をしていた頃も「何にでも使える資産」への公的支援は筋が悪いとされていました。補助金も同じで、審査側は「その経費が本当にこの事業だけのものか」を見ます。逆に言えば、艤装・厨房機器・広報のように事業専用性が明確な経費で計画を組むと、審査側の納得感が全く違います。

落とし穴: 交付決定前の発注は対象外

もう1つ、公募要領で明確なルールが「交付決定前に発注・契約・支払いをした経費は対象外」(同P.19)です。「先に艤装を発注して、採択されたら補助金に乗せよう」は通りません。申請→採択→交付決定→発注、の順序が崩れた瞬間に対象から外れます。よくある失敗は申請の落とし穴の記事にまとめています。

国の補助金の使いどころ|キッチンカー開業での対応表

車両本体以外の経費は、事業の内容に応じて国の補助金を使い分けます。

補助金 キッチンカーでの使いどころ 上限・補助率の目安
持続化補助金 艤装工事・厨房機器・チラシ・看板・メニュー開発。開業1年以内なら創業型(上限200万円)が第一候補 一般型50万円〜、創業型200万円・補助率2/3
ものづくり補助金 調理工程の生産性を高める設備投資。車両本体は対象外とされる
新事業進出補助金 既存事業者がキッチンカー事業へ業態転換・新展開する場合
デジタル化・AI導入補助金 モバイルオーダー・キャッシュレス・会計などのソフトウェア

新規開業の個人がまず検討すべきは持続化補助金(特に創業型)です。全体像は開業で使える補助金一覧で整理しています。なお、チラシ・販促に特化した使い方は販促費に使える補助金の記事、レジ・決済まわりは開業レジ・キャッシュレスの記事で詳しく解説しています。

自治体独自の補助金なら車両本体が対象になる例も

公園で営業するキッチンカーと行列の実写イメージ

国の補助金と役割分担するように、自治体のキッチンカー導入補助には車両本体の購入・取得まで対象にする例があります。実際の制度を見てみましょう。

自治体 制度名 補助率・上限 対象経費
福岡県久留米市 キッチンカー導入事業費補助金 1/2・上限30万円 車両購入費・車両改造費・設備導入費
千葉県南房総市 がんばる事業者支援事業補助金(移動販売導入支援) 30%以内・最大100万円(令和8年11月30日必着) 車両の取得・改造、新品の備品・設備

このほか、災害時の炊き出し協定とセットでキッチンカー導入を補助する自治体(北海道遠軽町など)も出てきています。関連して、内閣府は2025年6月から災害対応車両登録制度(D-TRACE)の運用を始めており、キッチンカー・トレーラーハウス等を事前登録しておくと、災害発生時に被災地の自治体からの要請調整に応じやすくなる仕組みが整いました(出典: 内閣府・D-TRACE運用開始資料)。D-TRACE自体は車両購入費を補助する制度ではありませんが、登録しておくこと自体が、平時の営業に加えて災害時の稼働機会という「もう一つの収益機会」につながる可能性がある点は、車両選定時に知っておく価値があります。

車両本体そのものではなく開業経費全体を広くカバーする制度も選択肢です。例えば東京都内で開業する場合、東京都と東京都中小企業振興公社の創業助成金は対象経費の2/3・上限400万円で、車両を除く什器・備品費や人件費まで含められます(令和8年度第2回は2026年9月29日〜10月8日受付予定)。艤装・厨房機器は国の補助金、什器や運転資金の一部は自治体の創業助成、というように制度を重ねて自己負担を削る発想を持つと選択肢が広がります(同一経費への重複受給は不可)。

自治体補助の探し方3ステップ

  1. 当サイトの補助金データベースで都道府県検索 — お住まいの県・市区町村の募集中案件を横断確認できます
  2. 「自治体名+キッチンカー 補助金」「自治体名+移動販売 補助金」で公式サイトを検索 — 金額・要件は自治体公式ページ(city.〜.jp等)の要綱で確認
  3. 商工会議所・商工会に相談 — 市区町村の小規模な補助金は検索に出てこないことも多く、窓口が最短ルートです

自治体補助は「市内に事業所があること」「車検証の使用の本拠が市内」「3年以上の営業継続」といった地元要件がつくのが一般的です。募集期間も短いため、開業予定地の自治体は早めに当たってください。

営業許可の基礎|2021年改正で何が変わったか

補助金と営業許可は別の話に見えますが、実は一体です。艤装の仕様は営業許可の施設基準で決まり、その艤装費が補助対象になるからです。順序を間違えないために基礎を押さえましょう。

キッチンカーは、食品衛生法に基づく飲食店営業などの営業許可を保健所から受けて営業します。2021年6月施行の改正食品衛生法で、施設基準は厚生労働省令の基準を参酌して都道府県等が条例で定める形に平準化され、すべての営業者にHACCP(ハサップ: 衛生管理の計画・記録の仕組み)に沿った衛生管理と食品衛生責任者の選任が求められるようになりました(出典: 厚生労働省・施設基準の全体像)。

給水タンク容量で「できる調理」が変わる

改正後の運用では、車に積む給水タンクの容量によって取り扱える品目の目安が3段階に整理されています(出典: 大阪市・自動車による営業ほか各自治体)。

給水タンク容量 できる営業の目安
約40L ドリンク提供や簡単な盛り付けなど単一工程の営業
約80L クレープ・サンドイッチなど2工程程度の簡易調理
約200L 麺類・カレーなど仕込みを含む本格調理・複数品目

※区分の運用は自治体で差があります。メニューを決めてから、出店予定地を管轄する保健所に事前相談するのが鉄則です。

許可の「広域化」が進んでいる

かつては市をまたぐたびに許可が必要な地域もありましたが、現在は広域化が進んでいます。例えば関西では2025年6月から関西広域連合域内(滋賀・京都・大阪・兵庫・奈良・和歌山・徳島)で許可基準が共通化され、共通基準での許可があれば府県域をまたいで営業できる仕組みになりました(出典: 大阪市)。北海道でも全道一円で有効な許可運用が始まっています(出典: 北海道庁)。出店エリアの構想がある方は、どの自治体で許可を取ると営業範囲が最大になるかまで含めて保健所に相談してください。

固定店舗とどちらが有利?|費用と商圏で比較

キッチンカーの車内で調理する店主の実写イメージ

比較軸 キッチンカー 固定店舗
初期費用 250万〜500万円程度 1,000万円超も珍しくない(物件取得+内装)
商圏 移動できる(平日オフィス街・週末イベント等) 立地に固定される
売上の上限 提供数・天候・出店枠に制約 席数×回転で伸ばせる
固定費 駐車場・仕込み場所代など軽い 家賃・人件費が重い
撤退・転換 車両売却で比較的軽い 原状回復・違約金が重い

初期費用と固定費の軽さ、商圏を自分で選び直せる柔軟性がキッチンカーの強みです。一方で、1日に提供できる数と出店枠に売上の上限が縛られる構造でもあります。固定店舗での開業と迷っている方は飲食店開業の補助金の記事と読み比べてください。

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

私は薬膳火鍋店の開業と業態転換を経験しましたが、飲食の売上は想像以上に「場所」で決まります。キッチンカーは初期投資が軽い分、この立地依存がさらに極端です。良い出店場所の枠は先に埋まっており、参入すれば良い枠が回ってくるわけではありません。融資審査の目線で言えば、事業計画に「どこに出店できる見込みか(できれば出店先の内諾)」が書けているかどうかで、計画の信用度が一段変わります。

資金計画の正解手順|補助金は「後から戻る」お金

最後に、元銀行員として資金計画の順序をお伝えします。補助金は原則後払いです。採択されても入金は事業実施・実績報告の後で、申請から1年近くかかることもあります。つまり、開業資金そのものは自己資金+融資で組み、補助金は「後から戻ってくる割引」として設計するのが正解です。

  1. 自己資金を固める(目安や貯め方は自己資金の記事へ)
  2. 日本政策金融公庫などの創業融資で車両本体を含む開業資金を調達(創業融資の記事)
  3. 補助金は艤装・広報など対象経費に絞って申請し、入金までの立替はつなぎ資金の設計でカバー
  4. 申請書類の核になる事業計画書は書き方の記事を参考に
DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

「補助金がもらえたら開業します」という計画は、審査する側から見ると順序が逆です。融資と自己資金で成立する計画に補助金が乗ると、資金繰りに余裕が生まれて計画全体の説得力が増す——この順序で組んだ申請者は、金融機関からも補助金審査からも信頼されます。

保険への加入も忘れずに|食中毒・車両事故のリスク管理

補助金や許可の話に隠れて見落とされがちですが、キッチンカー営業では保険への加入も開業準備の必須項目です。食品を扱う以上、食中毒や異物混入によるクレーム・損害賠償リスクはゼロにできませんし、公道を走る車両である以上、事故のリスクも固定店舗より高くなります。

保険 カバーする損害 目安
PL保険(生産物賠償責任保険) 提供した料理による食中毒・異物混入で顧客に損害を与えた場合の賠償 年間数千円〜2万円程度(補償額により変動)
施設賠償責任保険 車両からの出火・熱湯こぼれなど、営業活動そのものが原因の対人・対物事故 PL保険とセット販売の商品が多い
自動車保険(任意保険) 走行中・移動中の事故。車両保険を付ければ艤装した厨房設備の損害も対象にできる場合がある 用途を「事業用」で正しく申告することが前提

特に見落としやすいのが自動車保険の用途区分です。自家用として契約したまま営業に使うと、事故時に保険が下りない・契約自体が無効になるおそれがあります。艤装が完了し営業を始める前に、契約している保険会社へ用途変更(事業用への切り替え)を届け出てください。イベント出店や商業施設への出店では、主催者側からPL保険・施設賠償責任保険への加入を出店条件として求められるケースも一般的です。保険料は艤装費や厨房機器のように補助対象になりにくい経費ですが、開業後の運転資金と合わせて資金計画に組み込んでおきましょう。

よくある質問

Q. キッチンカーの車両購入に使える国の補助金はありませんか?
持続化補助金では車両本体(キッチンカー・キッチントレーラー)は補助対象外と公募要領に明記されています。車両本体への支援を探すなら自治体独自の補助金(久留米市・南房総市の例など)を確認し、補助金データベースや商工会議所で最新の募集を調べてください。

Q. 個人事業主でも補助金は使えますか?
使えます。持続化補助金は小規模事業者(商業・サービス業なら従業員5人以下)が対象で、個人事業主も申請できます。ただし申請時点で開業日を迎えていることが必要で、開業前の「創業予定者」は対象外です。開業日が公募締切から過去1年以内なら創業型(上限200万円)が有力です。

Q. 中古のキッチンカー(艤装済み)を買う場合は対象になりますか?
車両と艤装が一体の「キッチンカーの購入」は車両本体の購入として対象外と考えるのが安全です。対象になり得るのは、手元の車両に対する改造工事を外注するケースです。個別の線引きは申請前に事務局・商工会議所へ確認してください。

Q. 営業許可は開業のどの段階で取ればいいですか?
艤装の設計前に保健所へ事前相談するのが正解です。施設基準を満たさない艤装は作り直しになります。メニュー→必要なタンク容量・設備→艤装見積もり→(補助金の交付決定後に)発注、の順序で進めてください。


出典(一次情報): 小規模事業者持続化補助金 第20回公募要領(第8版)/商工会議所地区 補助金事務局/厚生労働省 改正食品衛生法 施設基準資料/大阪市 自動車(キッチンカー)による営業/北海道 自動車営業をはじめられる方へ/久留米市 キッチンカー導入事業費補助金/南房総市 がんばる事業者支援事業補助金

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この記事の執筆・監修|DK(元銀行員・FP2級)

元地方銀行員(融資審査7年・医療機関向け融資専門)。FP2級・日商簿記2級・証券外務員。事業再構築補助金の採択・交付を受け、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営。飲食店の開業・業態転換も経験。金融ライター歴10年以上・執筆数千本。

運営者について

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DK 元銀行員・FP2級|補助金採択で無人サロン開業

地方銀行で法人融資・融資審査を7年担当(医療機関向け融資専門)。独立後は金融ライターとして10年以上・数千本を執筆。事業再構築補助金の採択・交付を受けて24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営中。飲食店の開業・業態転換も経験。「貸す側」「借りる側」「補助金を使う側」の3つの立場を実体験した視点で解説しています。保有資格: FP2級/日商簿記2級/証券外務員。