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「ものづくり補助金に申請したい」——その前に、最初にお伝えすべきことがあります。旧・ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、23次公募(2026年5月8日締切)で受付を終了しました。2026年度に申請できるのは、後継にあたる「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の第1回公募(受付2026年8月31日開始・1次締切9月30日18:00・2次締切10月30日18:00)です。
筆者は元銀行員(融資審査7年)で、事業再構築補助金の採択・交付を受けて24時間無人サロンを開業した当事者です。制度の紹介だけでなく、審査で評価される「数字の作り方」と「採択後5年間の義務」まで踏み込んで解説します。
この記事で得られること
– 旧ものづくり補助金の終了と新制度への移行の正確な整理(公式の位置づけの言い回しまで)
– 統合第1回(受付8/31開始・1次締切9/30・2次締切10/30 18:00)の枠別上限・補助率(出典リンク付き)
– 賃上げ要件(付加価値額+4.0%/給与+3.5%/最低賃金+30円)の計算式と逆算モデル
– 個人事業主が申請できる条件と、従業員0名は対象外という決定的な変更点結論を先に
1. 旧ものづくり補助金は23次で受付終了。2026年度は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」第1回(1次締切9/30・2次締切10/30 18:00)に申請する
2. 補助上限は枠・従業員規模により750万〜9,000万円(賃上げ特例の上乗せ含む)。小規模の店舗ほど下段の上限になりやすい点に注意。旧制度の実績から採択率は3割台を想定して準備する
3. 採択はゴールではない。賃上げ未達・報告未提出は返還につながり得る。5年間・計6回の報告義務まで見込んで申請を判断する
ものづくり補助金は2026年どうなった?【結論: 新制度へ移行】

ものづくり補助金(正式名称: ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業の革新的な製品・サービス開発や設備投資を支援してきた、10年以上続く定番制度でした。「ものづくり」という名前ですが製造業専用ではなく、商業・サービス業の設備投資にも広く使われてきました。
しかし公式サイトに記載のとおり、23次公募(受付2026年4月3日〜5月8日)をもって申請受付は終了しています。今から旧制度に申請することはできません。
| 旧: ものづくり補助金 | 新: 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 | |
|---|---|---|
| 状況 | 23次(2026/5/8締切)で受付終了 | 第1回公募が進行中 |
| 受付期間 | — | 受付8/31開始・1次締切9/30・2次締切10/30 18:00 |
| 補助上限 | 従業員規模・枠により変動 | 枠により最大9,000万円(賃上げ特例含む) |
| 申請方法 | 電子申請(GビズIDプライム) | 電子申請のみ(GビズIDプライム必須) |
「統合」は正確には公式の表現ではない
世間では「ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合された」と言われますが、新制度の事務局公式サイトは、旧2制度(中小企業新事業進出補助金/ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)とは「異なる新しい補助制度」だと位置づけています。
つまり正確には「事実上の統合(公式には別の新制度)」です。旧制度の要件・運用がそのまま引き継がれる保証はないため、旧制度の知識のまま申請準備を進めるのは危険です。数値・要件は第1回公募要領PDFの原本で確認してください。
新旧の違い|旧2制度は新制度の3つの枠に引き継がれた

旧2制度は役割が分かれていました。ものづくり補助金は「既存事業の強化(革新的な製品・サービス開発)」、新事業進出補助金は「新分野への進出・業態転換」です。新制度ではこの役割分担が、1つの制度の中の3つの枠として整理されています。
| 新制度の枠 | 旧制度との対応(筆者の整理) | 向いている投資 |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 旧ものづくり補助金の役割を引き継ぐ | 既存事業での新製品・新サービス開発、設備投資 |
| 新事業進出枠 | 旧新事業進出補助金の役割を引き継ぐ | 業態転換・新市場への進出 |
| グローバル枠 | 旧制度のグローバル枠に相当 | 海外展開・輸出・インバウンド対応 |
「今の事業を伸ばす投資」なら革新枠、「新しい柱をつくる投資」なら新事業進出枠、というのが基本の使い分けです。新事業進出補助金側の経緯(単独公募は第4回で終了)は新事業進出補助金の解説記事で詳しくまとめています。
なお、省人化・省力化設備の導入が主目的なら、カタログ型で申請負担が軽い省力化投資補助金も比較候補です。販路開拓が中心なら持続化補助金、制度全体の逆引きは開業で使える補助金一覧をどうぞ。
補助金額はいくら?枠別の上限と補助率【最大9,000万円】

第1回公募の枠別上限・補助率は次のとおりです。上限額は従業員規模により細かく変動するため、自社の従業員数での上限は公募要領の規模別表で確認が必要です。
| 枠 | 補助上限(通常) | 賃上げ特例時 | 補助率 | 実施期間 |
|---|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 最大2,500万円 | 最大3,500万円 | 1/2(小規模・再生事業者は2/3) | 10か月以内 |
| 新事業進出枠 | 最大7,000万円 | 最大9,000万円 | 1/2(条件により2/3) | 14か月以内 |
| グローバル枠 | 最大7,000万円 | 最大9,000万円 | 2/3 | 14か月以内 |
出典: 事務局公式サイト・第1回公募要領PDF(1.2版・令和8年8月)
表の「最大」はいずれも従業員51人以上(新事業進出枠・グローバル枠は101人以上)の場合です。従業員1~5人なら革新的新製品・サービス枠は750万円(特例850万円)、従業員1~20人なら新事業進出枠・グローバル枠は2,500万円(特例3,000万円)が上限になります。小さな店舗の実感値としてはこちらの数字で計画してください。
対象経費|旧制度からの変更点は「広告宣伝・販売促進費」
新制度で見落とされがちなのが対象経費の範囲です。旧ものづくり補助金では広告宣伝・販売促進費は対象外でしたが、新制度の革新的新製品・サービス枠では新たに対象経費として追加されています。開発した新製品・新サービスの販路開拓費まで一体で計画できるようになった点は、旧制度との実質的な違いです。
| 経費区分 | 内容 | 旧ものづくり補助金との違い |
|---|---|---|
| 機械装置・システム構築費 | 設備・専用ソフトウェアの購入 | 同様に対象 |
| 技術導入費・知的財産関連費 | 知的財産権の導入・出願関連費用 | 同様に対象 |
| 外注費・専門家費・クラウド利用費 | 一部工程の外注、専門家指導、クラウドサービス利用料 | 同様に対象 |
| 原材料費 | 試作品の製造に必要な原材料・部品 | 同様に対象 |
| 広告宣伝・販売促進費 | 開発した新製品・新サービスの広報・販促費 | 新規に対象化(旧制度は対象外) |
出典: ミラサポplus
押さえるべきポイントは3つです。
- 賃上げ特例: 通常より高い水準の賃上げにコミットすると上限が上乗せされます(革新枠+1,000万円、新事業進出枠・グローバル枠+2,000万円)。特例の具体的な賃上げ水準は
- 補助率1/2の意味: 5,000万円の投資でも受け取れるのは最大その半分。残りは自己負担です
- お金は後払い: 経費は先に全額自分で支払い、実績報告の後に入金されます。つなぎ資金の設計を申請前に考えておく必要があります
申請の条件|賃上げ要件は「逆算」で数字を作る
ここが本記事の核です。多くの解説は要件を列挙して終わりますが、審査で問われるのは「要件を満たすと書くこと」ではなく「達成できる根拠のある数値計画」です。
基本要件は4つ(補助事業終了後3〜5年の事業計画で必須)
| 要件 | 水準 |
|---|---|
| 付加価値額 | 年平均成長率+4.0%以上 |
| 1人あたり給与支給総額 | 年平均成長率+3.5%以上 |
| 事業場内最低賃金 | 地域別最低賃金+30円以上 |
| 職場環境 | 子育て・職場環境整備の取組(一般事業主行動計画) |
各指標の計算式
- 付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費。売上ではなく「会社が生み出した価値」の指標です
- 1人あたり給与支給総額 = 全従業員等への給与支給総額 ÷ 従業員数。年平均+3.5%の成長が必要です
- 事業場内最低賃金 = 事業場内で最も低い時給。これを地域別最低賃金+30円以上に保ちます
モデルケースで逆算する(筆者作成の試算)

従業員10名・1人あたり給与400万円・付加価値額5,000万円の会社が5年計画を組む場合、複利計算では次の水準が必要になります。
| 指標 | 現在 | 5年後に必要な水準 | 年あたりの目安 |
|---|---|---|---|
| 1人あたり給与 | 400万円 | 約475万円 | 毎年+約14万円(10名なら総額+約140万円/年) |
| 付加価値額 | 5,000万円 | 約6,083万円(約1.22倍) | 毎年+4.0%の積み上げ |
| 事業場内最低賃金 | 例: 時給1,080円 | 地域別最低賃金+30円以上を維持 | 最低賃金改定のたびに追随 |
逆算の考え方はこうです。「機械を買いたい」から始めるのではなく、この設備投資が付加価値額+1,083万円をどう生むか——生産量増による営業利益、省人化で浮いた工数の再配置、導入設備の減価償却費——を因果関係で説明し、その利益成長が給与+3.5%の原資になる、という一本の線で計画を書きます。
未達なら返還リスクがある
事務局公式サイトには、賃上げ要件を達成できない場合、補助金の一部または全額の返還を求められる可能性が明記されています。「盛った数字」は採択には近づくかもしれませんが、5年間の報告(後述)で裏目に出ます。
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
銀行員として融資審査をしていた頃も、根拠のない右肩上がりの計画は一目でわかりました。補助金審査も同じで、「売上が伸びるので賃上げできます」ではなく「この設備で1個あたりの加工時間が◯分短縮→月産◯個増→粗利+◯万円」と、生産性の数字で語る計画が信頼されます。要件ぎりぎりの+4.0%ではなく、余裕を持って達成できる投資かどうかを先に検討すべきです。
そもそも対象外になる事業者
- 従業員(常勤)0名の事業者
- 創業1年未満の事業者(新事業進出枠)
- みなし大企業(大企業の子会社等)
- 過去の補助金で不正等があった事業者
出典: ミラサポplus
個人事業主は申請できる?【従業員0名は対象外】

個人事業主も「中小企業者等」に含まれ、申請自体は可能です。ただし、旧制度の感覚のままだと見落とす決定的な変更点があります。
- 従業員0名は対象外: ひとりで営む個人事業主は申請できません。賃上げ要件が制度の柱になったため、「賃上げする従業員がいない」事業者は対象から外れています
- 新事業進出枠は創業1年未満不可: 開業したての個人事業主が業態拡大を狙う使い方はできません
- 必要書類は法人と異なり、確定申告書・青色申告決算書などが求められるのが通例です
- 専従者給与や家族従業員の賃上げ要件上の扱いは、算定定義の確認が必須です
従業員数名の小規模事業者であれば、革新枠で補助率2/3(小規模事業者)の優遇があり、土俵には十分乗れます。一方、従業員0名・創業直後で対象外となる場合は、小規模向けの持続化補助金や創業融資から資金調達を組み立てるのが現実的です。開業段階の制度選びは開業で使える補助金一覧に整理しています。
採択率はどれくらい?公式実数と第1回の見通し
旧ものづくり補助金の採択率は、公式サイトが公表する実数で確認できます。
| 公募回 | 応募者数 | 採択者数 | 採択率 |
|---|---|---|---|
| 18次 | 5,777 | 2,070 | 35.8% |
| 19次 | 5,336 | 1,698 | 31.8% |
| 20次 | 2,453 | 825 | 33.6% |
| 21次 | 1,872 | 638 | 34.1% |
| 22次 | 1,552 | 582 | 37.5% |
出典: ものづくり補助金総合サイト 採択結果(23次は2026年7月19日時点で未発表)
読み取れるのは2点です。応募者数は5,777→1,552と大きく減る一方、採択率は約3人に1人の3割台で安定していたこと。つまり「応募が減れば通りやすくなる」単純な構図ではなく、審査水準が保たれていたことです。
統合後の第1回は、旧2制度の申請予定者が1つの公募に合流するため、申請が集中する可能性があります(筆者の見解。採択率は未知数です)。「3人に1人」の前提で、計画の質で勝負する準備をおすすめします。他の補助金との難易度比較は主要補助金の採択率まとめをどうぞ。
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
実際に申請を経験して痛感しましたが、採択率3割台の審査は「書類の出来」の相対評価です。融資審査は基準を満たせば通りますが、補助金は他の申請者と競うコンテスト。同じ投資内容でも、数値計画の根拠の厚さで順位が変わります。だからこそ前章の「逆算」に時間をかける価値があります。
申請の流れとスケジュール【1次締切9/30・2次締切10/30 18:00】
第1回公募の確定日程は次のとおりです。応募締切は1次・2次の2段階で設定されています。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募要領公開 | 2026年6月29日 |
| 申請受付開始 | 2026年8月31日(月) |
| 1次締切 | 2026年9月30日(水)18:00 |
| 2次締切 | 2026年10月30日(金)18:00 |
| 採択発表 | 1次発表:令和8年12月(予定)/2次発表:令和9年1月(予定) |
出典: 事務局 公募スケジュール・ミラサポplus・中小機構ニュース(中小機構の表記は「18時(予定)」)
申請は電子申請のみ・GビズIDプライム必須です。流れは次のようになります。
- GビズIDプライム取得(発行まで通常1〜2週間程度。混雑時はさらに要余裕)
- 公募要領の熟読 → 枠の選択 → 見積取得
- 事業計画書の作成(賃上げ逆算・生産性の数字づくりが本体)
- 電子申請(締切間際はシステム混雑のリスクがあるため前倒しで)
- 審査(口頭審査が課される場合あり)→ 採択発表
- 交付申請 → 交付決定後に発注 → 事業実施 → 実績報告 → 入金
とくに6.の順序は重要です。交付決定前に発注した経費は補助対象外になります。この種の失敗パターンは補助金申請の落とし穴と対策にまとめています。また入金は事業完了後のため、それまでの立替資金はつなぎ資金の記事を参考に、金融機関への相談を早めに始めてください。
採択後の義務|事業化状況報告と返還リスク【もらって終わりではない】
申請前に知っておくべき最後の論点が、採択後5年間の義務です。旧ものづくり補助金では次が課されていました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 義務期間・回数 | 補助事業終了後5年間・合計6回 |
| 報告時期 | 毎年4月1日〜5月31日 |
| 提出物 | 事業化状況・知財報告書、実態把握調査票、返還計算シート、直近決算書、3月分賃金台帳 |
| 未報告の場合 | 賃上げ達成の判定ができず、補助金返還の対象になり得る |
新制度でも賃上げ要件が達成できたかを事後に確認する仕組みが前提となっているため、同種の報告義務を見込んでおくべきです。なお旧制度の収益納付(収益が出た場合の一部納付)は、公募回により扱いが異なります。
また、受け取った補助金は課税対象の収入になります。圧縮記帳などの税務処理は補助金と税金の記事で解説しています。
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
私自身、採択後にいちばん大変だったのは申請書ではなく「その後」でした。交付申請・実績報告・毎年の状況報告と、経理資料を整えて出し続ける事務が5年単位で続きます。賃金台帳や決算書をすぐ出せる体制がない事業者は、採択後に苦しみます。申請前に「この報告を6回やれるか」を自問してみてください。それでも使う価値のある制度です。
よくある質問
Q. 旧ものづくり補助金(23次)に今から申請できますか?
できません。受付は2026年5月8日で終了しています。2026年度の申請先は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回(1次締切9/30・2次締切10/30 18:00)です。
Q. 第2回公募はありますか?
2026年8月14日時点で第2回の具体的な日程は公表されていません(公募回数は3回程度になる見通しとの情報もありますが、公式発表ベースではありません)。「次があるだろう」と見送るのはリスクがあるため、投資計画が固まっているなら第1回での申請をおすすめします。
Q. 他の補助金と併用できますか?
同一の経費を複数の補助金で重複して受けることはできません。事業や経費を分ければ併用できる場合があります。制度の組み合わせ方は補助金データベースで確認できます。
Q. 不採択だったら再申請できますか?
旧制度では次回公募での再申請が認められていました。新制度の扱いと第2回の有無は未公表のため、不採択理由を踏まえた計画の作り直しを前提に、公式発表を待つことになります。
まとめ|締切10/30から逆算する行動リスト
- 今週: GビズIDプライムの有無を確認(未取得なら即申請)。第1回公募要領PDFの原本を読む
- 8月中: 枠の選択・設備の見積取得・賃上げ要件の逆算(付加価値+4.0%/給与+3.5%を達成できる投資か)
- 9/30〜10/30: 電子申請(締切10/30 18:00)。締切間際は避ける
- 並行して: 後払いに備えたつなぎ資金と、採択後5年の報告体制の検討
制度は変わりましたが、「生産性を数字で語れる計画が勝つ」という本質は旧制度から変わっていません。最新の公募情報は補助金データベースで随時更新しています。
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この記事の執筆・監修|DK(元銀行員・FP2級)
元地方銀行員(融資審査7年・医療機関向け融資専門)。FP2級・日商簿記2級・証券外務員。事業再構築補助金の採択・交付を受け、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営。飲食店の開業・業態転換も経験。金融ライター歴10年以上・執筆数千本。
