制度解説

飲食店開業の補助金|厨房機器・内装に使える制度マップ

飲食店開業の補助金|厨房機器・内装に使える制度マップ

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飲食店の開業は、店舗ビジネスの中でも特に初期費用が重い業種です。筆者は元銀行員として飲食店の融資と資金繰りを数多く見てきて、自分でも飲食店を開業し、のちに通販へ業態転換した経験があります。その両方の立場から、「開業費用のどの部分に、どの補助金が、いつ効くのか」を費用構造からの逆引きで解説します。

この記事で得られること
– 飲食店開業の費用構造(物件・内装・厨房・運転資金)と、補助金が効く場所・効かない場所のマップ
厨房機器はどの補助金で買えるかの機器別逆引き(券売機・食洗機・スチコン・配膳ロボット等)
– 開業「前」に使える制度は限られる現実と、融資→開業→補助金という正しい順序
– 飲食店を開業・業態転換した筆者と、銀行員として飲食店の資金繰りを見てきた審査側の視点

結論を先に
1. 開業前の初期費用そのものに使える国の補助金は、ほぼありません。開業資金は自己資金+創業融資で組むのが正しい順序です
2. 開業後は大きく戻せます。厨房機器・省人化機器は省力化投資補助金(カタログ型)と業務改善助成金、POS・予約はデジタル化・AI導入補助金、チラシ・販路は持続化補助金〈創業型〉が本命
3. 全制度共通で交付決定前の発注・契約・支払いは対象外。内装・厨房の見積を急ぐ開業期こそ、この事故が起きやすい

飲食店開業の費用構造|どこにいくらかかるか

まず「何にお金が出ていくのか」を4つに分けます。補助金の話はこの地図の上でしか整理できません。

飲食店開業の費用構造と対応する補助金のマップ図解

費目 内訳 目安レンジ 補助金は効くか
物件取得費 保証金(家賃6〜10か月分)・礼金・仲介手数料・前家賃 100万〜400万円 ほぼ効かない(融資で賄う領域)
内装・外装費 内装工事・給排水/ガス/ダクト工事・看板 坪30万〜80万円 自治体の開業支援+持続化(一部)が候補
厨房機器・設備 冷蔵庫・コンロ・スチコン・食洗機・券売機・POSレジ 100万〜500万円 省力化投資・業務改善助成金・デジタル化AIの主戦場
運転資金 仕入・人件費・家賃の3〜6か月分 150万〜500万円 効かない(融資と売上で回す領域)

金額はスケルトン10〜20坪の小規模店を想定した筆者の目安です。居抜きなら内装・厨房を大きく圧縮できます。

ポイントは、費用の大きい順(物件・運転資金)ほど補助金が効かないことです。補助金が効くのは内装の一部と設備、そして開業後の販路開拓。だからこそ、次の「順序」の話が全体の土台になります。

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

銀行員時代、飲食店の融資審査でいちばん多かった失敗は「内装と厨房で予算を使い切り、運転資金を積まずに開業する」パターンでした。飲食店は開業から数か月、売上が読めません。補助金を検討する前に、まず運転資金6か月分を死守してください。これは審査側から見た、開業計画の合否を分ける一線です。

大前提|開業「前」に使える補助金は、ほぼない

検索すると「飲食店開業で使える補助金◯選」という記事が並びますが、最初に現実を書きます。国の補助金は原則、開業(開業届・登記)後でないと申請できず、しかも後払いです。採択されても、お金が入るのは設備を自腹で買って実績報告をした後。開業前の「これから払う内装費・保証金」を補助金で作ることは、基本的にできません。

だから順序はこうなります。

飲食店開業の資金調達の正しい順序(自己資金→融資→開業→補助金)の図解

  1. 自己資金を貯める・見せ方を整える — 総投資の1/3が目安(自己資金の記事)
  2. 創業融資を申し込む — 日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金が第一候補(創業融資の記事)
  3. 開業する — 営業許可・開業届。ここで初めて補助金の入口に立てる
  4. 開業後の投資と販路開拓を補助金で戻す — 厨房の増強・省人化・チラシ・POS
  5. 入金までのつなぎを設計する — 補助金は後払い(つなぎ資金の記事)

例外的に、自治体の開業支援(後述の渋谷区など)は「これから開業する人」を対象に含むものがあり、東京都の創業助成事業のように創業期を狙った制度もあります。国の持続化補助金〈創業型〉も「開業済み+創業1年以内」が対象で、開業直後なら十分間に合います。制度全体の時系列マップは開業で使える補助金一覧にまとめています。

飲食店開業で使える補助金・助成金マップ【一覧】

飲食店の文脈に絞って、2026年度に現実的な制度を一覧にします。

制度 飲食店での使いどころ 上限・補助率 タイミング
持続化補助金〈創業型〉 チラシ・看板・Web・メニュー開発など販路開拓+一部設備 200万円(インボイス特例250万円)・2/3 創業1年以内。第4回は締切2026年12月15日で確定(受付開始日は準備中)
省力化投資補助金(カタログ注文型) 券売機・食洗機・スチコン・配膳ロボット等の省人化機器 従業員5名以下500万円(賃上げ特例750万円)・1/2以下 随時受付。交付決定まで概ね1〜2か月
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金) POSレジ・モバイルオーダー・予約・会計ソフト ソフト最大4/5(小規模・50万円以下)/レジ等ハード20万円・1/2 年数回の締切制
業務改善助成金 スタッフの賃上げとセットで厨房機器・POSを導入 コース別上限40万〜450万円(特例最大600万円)・4/5又は3/4 令和8年度は9/1申請開始
自治体の開業支援(例: 渋谷区) 内装・外装工事費、設備費、開業時の広告費 例: 渋谷区は250万円・4/5 自治体・年度による

出典は各制度の公式ページ(本文の該当箇所にリンク)です。金額・締切は申請前に最新の公募要領で確認してください。

なお、ものづくり補助金と統合された新事業進出・ものづくり商業サービス補助金は大型投資向けで、開業したての飲食店にはハードルが高い制度です。2年目以降の2号店・セントラルキッチン投資で戻ってくる場所と考えてください。

厨房機器はどの補助金で買えるか【機器別逆引き】

この記事の核です。「厨房機器 補助金」で調べると制度名の羅列ばかりで、「うちが買いたいこの機械はどれか」に答える情報がほとんどありません。機器別に逆引きします。

飲食店の厨房で仕込みをする店主

省力化投資補助金カタログに載っている飲食向け機器【実名】

省力化投資補助金(カタログ注文型)は、事務局に登録された製品カタログから選んで申請する方式です。公式の対象カテゴリ一覧を原文で確認したところ、飲食店に関係するカテゴリとして次が並んでいます。

店の悩み カタログに載っている機器カテゴリ
レジ・注文の人手を減らしたい 券売機/自動精算機(タッチパネル注文・自動釣銭)
洗い場が回らない 業務用自動食器類洗浄機(いわゆる業務用食洗機)
調理の仕込みを速くしたい スチームコンベクションオーブン/自動フライヤー/コンベアオーブン/両面焼きグリドル/食品スライサ・カッタ
ホールの配膳が足りない 配膳ロボット/清掃ロボット
仕込みの作り置き・ロスを減らしたい 急速冷却・急速凍結機/解凍機/再加熱キャビネット/ドゥコンディショナー(パン生地発酵管理)

自分の買いたい製品が登録されているかは製品カタログ検索で機種名まで確認できます。2026年3月の制度改定で従業員5名以下の上限が200万→500万円に引き上げられ、補助率1/2なら投資総額1,000万円規模までカタログ型で視野に入ります(公式の改定案内)。「券売機+食洗機+スチコン」のような厨房まるごとの省人化を1本で束ねられる規模です。詳しい使い方は省力化投資補助金の記事へ。

賃上げとセットなら業務改善助成金【厨房機器の隠れ本命】

パート・アルバイトを雇う店なら、業務改善助成金が厨房機器のもう一つの入口です。「店の最低時給を50円以上引き上げる」ことと生産性向上の設備投資をセットで行うと、設備費の4/5(事業場内最低賃金1,050円以上は3/4)が助成されます。厚生労働省の案内にはPOSレジ導入が公式例として載っており、生産性を上げる厨房機器も対象になり得ます。

例えば「ホール2人の時給を70円上げて、100万円の食洗機と下処理機を入れる」なら、100万円×4/5=80万円が上限100万円(70円コース・2〜3人)の範囲に収まる規模感です(筆者の試算例)。注意点は雇入れ6か月経過した雇用保険被保険者が賃上げ対象であること。開業と同時には使えず、開業半年後からの制度です。

POSレジ・予約・モバイルオーダーはデジタル化・AI導入補助金

ソフトウェア系はデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の領域です。インボイス枠ならPOSレジ・会計・決済連携のあるソフトは50万円以下の部分が小規模事業者4/5補助、レジ本体・券売機などのハードも上限20万円・1/2で乗せられます(ソフトとのセット申請が必須。公式ページ)。レジ周り一式の計算例と機種選びは開業レジ・キャッシュレスの記事で詳しく解説しています。

逆引きまとめ

買いたいもの 第一候補 併せて検討
券売機・セルフレジ 省力化(カタログ型) デジタル化AI(ソフトとセットで20万円)・業務改善助成金
業務用食洗機 省力化(カタログ型) 業務改善助成金(賃上げするなら)
スチコン・フライヤー等の加熱機器 省力化(カタログ型) 業務改善助成金
配膳ロボット 省力化(カタログ型)
POSレジ・予約・モバイルオーダー デジタル化・AI導入 業務改善助成金(POS公式例)
冷蔵庫・製氷機など基礎厨房 補助金の谷間になりやすい(省人化文脈に乗らないため) 賃上げと組めば業務改善助成金の余地。省エネ系補助金は年度ごとに変動

「何でも補助金で買える」わけではなく、基礎的な厨房機器ほど制度の谷間に落ちやすいのが実態です。ここは融資で買い、省人化・デジタル化に当たる投資だけ補助金に乗せる、という切り分けが現実的です。

導入したい厨房機器は?(機器タイプ別に使える制度)
導入したい厨房機器 使える制度
POS・予約・モバイルオーダー等 デジタル化・AI導入補助金(時給+50円等の賃上げを予定するなら業務改善助成金も検討)
券売機・食洗機・スチコン等(カタログ掲載機器) 省力化投資補助金(カタログ型)
冷蔵庫・製氷機等の基礎厨房 補助金の谷間になりやすい → 創業融資で調達

内装・改装・販路開拓に効く制度

開店準備中のカフェで椅子を並べる店主

内装・外装は金額が大きいわりに国の制度が薄い費目ですが、自治体の開業支援がここを埋めることがあります。実例として、渋谷区の店舗開業支援補助金(渋谷Local Street Project)補助率4/5・上限250万円で、内装・外装工事費、建物附属の設備費、開業時のWebサイト・チラシ費まで対象。飲食店の採択実績も掲載されており、令和8年度は4/15〜6/1(第1回)・7/15〜8/31(第2回)の年2回募集でした。年度によって募集時期・回数は変わるため、次回募集の有無は自治体ページで確認してください。

こうした制度は「自治体名+創業+補助金」「自治体名+店舗+補助金」で検索し、商工会議所にも聞いてみてください。地域によって有無と厚みがまったく違います。全国分をまとめて横断検索したい場合は、中小機構が運営するJ-Net21支援情報ヘッドラインで都道府県・分野を指定して絞り込むと、自治体単位で探すより早く候補に当たれます。

開業後の販路開拓——チラシ・看板・Web・新メニュー開発——は持続化補助金〈創業型〉の主戦場です。創業1年以内なら上限200万円(一般型の4倍)。ただし「特定創業支援等事業の修了+開業が締切から過去1年以内」という時限要件があるため、開業前の段階で自治体の特定創業支援の受講を仕込んでおくのが定石です。店舗の改装・リニューアル文脈の制度は、並行制作中の店舗改装の補助金の記事で掘り下げます。

【体験談】飲食店を開業して分かった、補助金より先に決まる勝負

筆者は飲食店を自分で開業し、数年運営した後に通販へ業態転換しました。その経験から、開業前のあなたに伝えたいことが2つあります。

1つ目。飲食店の費用は「開業後」も重いということです。開業費用の話ばかりが語られますが、実際に苦しいのは毎月の家賃・人件費・仕入が、天候や近隣のイベント一つで揺れる売上と関係なく出ていくこと。筆者が通販への転換を決めたのも、店舗という固定費の塊と売上の振れ幅の相性の悪さが理由でした。補助金は初期投資の回収を早めてくれますが、損益分岐点そのものを下げるのは省人化と業態設計です。券売機や食洗機への投資が単なる「設備購入」ではなく損益構造の改善である、と捉えられるかが分かれ目です。

2つ目。業態転換の選択肢を最初から頭に入れておくこと。飲食店は、店内飲食・テイクアウト・通販・卸と、同じ商品で複数の売り方ができる稀有な業種です。筆者は店舗で作っていた商品を通販に載せ替えて事業を続けられました。この「逃げ道の設計」は、後述の融資審査でもプラスに働きます。

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

銀行員として飲食店の融資を担当していた頃、開業計画の面談で決まって聞いていたのは「昼と夜、それぞれ1日何人来たら家賃と人件費が払えますか」でした。即答できる人の店は資金繰り相談に来ることが少なく、答えに詰まる人ほど半年後に追加融資の相談に来る。補助金の申請書で問われる「数値計画」は、審査のための作文ではなく、この質問に自分で答えるための道具です。

申請の順序とスケジュール|開業6か月前から

ここまでの内容を、開業日から逆算した時系列に落とします。

時期 やること
開業6か月前 自治体の特定創業支援等事業の受講開始(持続化〈創業型〉の入場券)。自己資金の整理。自治体の開業支援制度を調査
開業3〜4か月前 公庫の創業融資申込。物件契約。自治体開業支援(渋谷区型)は着工前に申請が原則
開業前後 営業許可取得・開業届。POS・予約はデジタル化AI補助金の締切から逆算して構成を検討
開業〜半年 持続化〈創業型〉で販路開拓(第4回は締切2026年12月15日で確定。受付開始日は公式サイトで確認)。省力化カタログ型は随時
開業半年〜 スタッフの賃上げと合わせて業務改善助成金で厨房を増強

そして全制度共通の最重要ルールがこれです。交付決定前に発注・契約・支払いをした経費は補助対象外。内装や厨房は「工期があるから」と発注を急ぎがちで、開業期はこの事故が最も起きやすい局面です。採択から入金まで長い後払い構造も含め、落とし穴の全体は申請の落とし穴の記事にまとめています。

なお、食品衛生責任者の資格取得と保健所の営業許可は、補助金とは別軸で欠かせない手続きです。開業手続き全体の流れは開業で使える補助金一覧(開業ガイド)から順にたどってください。

居抜き・事業承継で開業する場合

飲食店は「ゼロから開業」だけでなく、居抜き物件での承継・引き継ぎという選択肢も現実的です。廃業する店の設備・内装をそのまま引き継げば、厨房機器・内装費そのものを圧縮できます。この場合は本記事の制度に加えて、事業承継・M&A補助金が候補になります。譲り受け側の店舗改修・設備更新費用が対象になり得るため、居抜き取得を検討している段階で一度制度の対象になるか確認しておく価値があります。

また、原材料費・光熱費の高騰は開業後の飲食店経営で避けて通れない論点です。国の補助金は物価高騰そのものを直接補填する制度ではありませんが、業務改善助成金は「利益率が前年より3%ポイント以上低下した」事業者を特例事業者と位置づけ、賃上げとセットでの設備投資支援に加えてパソコン等の端末導入まで対象を広げています。値上げ・仕入コスト対策そのものは経営判断の領域ですが、こうした特例の存在は覚えておいて損はありません。

よくある質問

Q. 開業前でも申請できる補助金はありますか?
国の補助金は原則、開業後の申請です。例外は自治体の開業支援(渋谷区型のように「これから開業する人」を含む制度)と東京都創業助成のような創業期向け制度です。開業前の資金は融資で組むのが基本です。

Q. 居抜き物件の内装手直しや中古の厨房機器は対象になりますか?
制度によります。省力化カタログ型は登録された新品の製品が前提で、中古品は原則対象外です。居抜きの改装費は自治体制度や持続化の対象になり得ますが、「何の売上につながる工事か」を説明できることが条件です。

Q. 複数の補助金は併用できますか?
同じ経費への重複受給は不可、経費を分ければ併用可能というのが基本線です。例えば「券売機は省力化、チラシは持続化、POSソフトはデジタル化AI」という費目の切り分けなら設計できます。

Q. 補助金はいつ入金されますか?
採択→交付決定→自腹で購入→実績報告→入金、の順で、申請から入金まで半年〜1年程度かかるのが普通です。その間の支払いは自己資金と融資で立て替えます(つなぎ資金の記事)。

Q. 何から始めればいいですか?
①運転資金6か月分を含む資金計画づくり、②自治体窓口で「特定創業支援」と開業支援制度の確認、③買いたい厨房機器が省力化カタログにあるかの検索。この3つが今日からできる一歩です。

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この記事の執筆・監修|DK(元銀行員・FP2級)

元地方銀行員(融資審査7年・医療機関向け融資専門)。FP2級・日商簿記2級・証券外務員。事業再構築補助金の採択・交付を受け、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営。飲食店の開業・業態転換も経験。金融ライター歴10年以上・執筆数千本。

運営者について

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DK 元銀行員・FP2級|補助金採択で無人サロン開業

地方銀行で法人融資・融資審査を7年担当(医療機関向け融資専門)。独立後は金融ライターとして10年以上・数千本を執筆。事業再構築補助金の採択・交付を受けて24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営中。飲食店の開業・業態転換も経験。「貸す側」「借りる側」「補助金を使う側」の3つの立場を実体験した視点で解説しています。保有資格: FP2級/日商簿記2級/証券外務員。