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「開業に使える補助金」を検索すると、終了した公募や旧制度名の情報が数多く残っています。2026年度はIT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に変わり、ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合されるという大きな改編の年。古い記事のまま動くと、申請先そのものを間違えかねません。
この記事は、銀行で融資審査に携わり、自分でも補助金の採択・交付を受けて無人サロンを開業した筆者が、2026年度の一次情報(公式サイト・公募要領)だけを根拠に、開業者向けの制度を整理したものです。
この記事で得られること
– 開業タイミング別マップで、いまの自分が申請できる制度がすぐわかる
– 2026年度改編後の正式名称・最新公募回・締切(公式リンクつき)
– 飲食店開業1,000万円の実額シミュレーション(結局いくら戻るのか)
– 後払い・課税・つなぎ資金という「もらった後」の落とし穴への備え結論を先に
1. 開業前の初期費用そのものに使える国の補助金は、ほぼありません。開業前の現実解は創業融資と自治体の支援です
2. 開業直後から使える制度は多い(持続化〈創業型〉・デジタル化AI導入・省力化カタログ型など)。ただしすべて後払い
3. 制度選びは「どの補助金か」ではなく「何にお金を使うか」からの逆引きが近道です
まず結論:開業タイミング別・使える制度マップ

多くの解説記事は制度を羅列しますが、開業者にとって重要なのは「いつ・何が使えるか」の時間軸です。
- 開業6カ月前〜: 補助金の出番はまだ先。自治体の特定創業支援等事業の受講と、創業融資・自己資金の計画づくりが先です
- 開業前後: 日本政策金融公庫の融資、東京都創業助成などの自治体支援
- 開業直後〜: 持続化補助金〈創業型〉、デジタル化・AI導入補助金、省力化投資補助金(カタログ注文型)
- 開業1年後〜: 実績がつき、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金など大型制度も視野に
自分の業種・目的に合う制度の絞り込みには補助金データベースも使えます。
補助金・助成金・給付金・融資の違い
言葉が似ていて混同しやすいですが、性格はまったく違います。
| 区分 | 主な管轄 | 返済 | 審査・競争 | 入金タイミング |
|---|---|---|---|---|
| 補助金 | 経済産業省・自治体 | 不要 | あり(採択制。落ちることがある) | 後払い(実績報告後) |
| 助成金 | 厚生労働省(雇用系) | 不要 | 要件を満たせば原則受給 | 後払い |
| 給付金・支援金 | 国・自治体 | 不要 | 要件確認 | 申請後 |
| 融資 | 日本政策金融公庫・銀行 | 必要 | 与信審査 | 開業前に使える唯一の選択肢 |
出典: ミラサポplus(中小企業向け補助金・総合支援サイト)
最大のポイントは、補助金が「使ったお金の一部が後から戻る」仕組みだということ。手元にお金がない状態を補助金で埋めることはできません。
開業前〜直後に「先に」動くべき2つの制度

特定創業支援等事業(全制度の「入口」になる)
特定創業支援等事業とは、市区町村と商工会議所などが行う1カ月以上・4回以上の継続的な創業支援(セミナー・個別相談)のこと。修了証明をもらうと、次の特典があります。
- 会社設立時の登録免許税が半額
- 創業融資・信用保証の優遇
- 持続化補助金〈創業型〉の申請要件を満たせる(重要)
創業型は「特定創業支援による支援を受けた日と開業日が、公募締切から過去1年以内」という時限要件があります。受講に1カ月以上かかるため、開業の半年前には自治体窓口に問い合わせるのが逆算の目安です。「お住まいの自治体名+特定創業支援」で検索してみてください。
日本政策金融公庫の創業融資(開業前の現実解)
開業前の内装・設備・運転資金は、補助金ではなく公庫の新規開業・スタートアップ支援資金でまかなうのが王道です。無担保・無保証人の枠があり、創業者の利用実績が最も多い制度です。詳しくは創業融資の記事で解説しています。
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
銀行で審査する側だった頃、「補助金がもらえる前提」の創業計画は正直、評価できませんでした。順序は逆です。自己資金と融資で開業できる計画をまず作り、補助金は「採択されたら戻ってくるボーナス」と位置づける。この順序で作った計画は、金融機関からも補助金審査からも信頼されます。
開業後すぐ使える国の補助金4選【2026年度】

1. 小規模事業者持続化補助金〈創業型/一般型〉
チラシ・HP・看板・小規模な設備など販路開拓の費用を支援する、開業者が最初に検討すべき制度です。
| 型 | 補助上限 | 補助率 | 直近の公募 |
|---|---|---|---|
| 一般型〈通常枠〉 | 50万円(インボイス特例+50万円、賃金引上げ特例+150万円で最大250万円) | 2/3 | 第20回: 2026/11/5〜12/15 17:00締切 |
| 創業型 | 200万円(特例活用で最大250万円) | 2/3 | 第4回: 日程未定(準備中。一般型第20回は2026/11/5〜12/15) |
※金額・特例・締切は変更されることがあります
創業型は上限が一般型通常枠の4倍。前述の特定創業支援の修了が前提です。制度の詳細は持続化補助金の記事、創業者向けの選び方は創業者向け補助金の記事へ。
2. デジタル化・AI導入補助金2026(旧IT導入補助金)
2026年度からIT導入補助金が改称された制度です。古い記事の名称で探すと迷子になるので注意してください。POSレジ・予約システム・会計ソフトなど、店舗のITツール導入に使えます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限(通常枠) | 最大450万円(1プロセス以上=5万円以上150万円未満/4プロセス以上=150万〜450万円) |
| 補助率 | 通常枠は1/2以内(最低賃金近傍の従業員が3割以上の場合2/3以内)。※インボイス枠は別基準(ソフト50万円以下部分3/4・小規模4/5) |
| 直近の締切 | 1次締切分: 2026/9/29 17:00(複数者連携デジタル化・AI導入枠は2026/10/30 17:00。以降の回は現時点で未公表。公式スケジュールで確認) |
※区分・要件が細かい制度です
出典: デジタル化・AI導入補助金 公式(通常枠)/中小企業庁 制度概要PDF
対象ツールは事務局に登録されたものに限られます。選び方はデジタル化・AI導入補助金の記事で解説しています。
3. 中小企業省力化投資補助金〈カタログ注文型/一般型〉
人手不足対応の設備投資を支援する制度で、開業系の記事ではほとんど紹介されない穴場です。券売機・自動精算機・配膳ロボット・清掃ロボットなど、少人数運営の店舗と相性が良い設備が並びます。
| 型 | 補助上限 | 補助率 | 公募 |
|---|---|---|---|
| カタログ注文型 | 最大1,500万円 | 1/2 | 随時受付(カタログ掲載製品から選ぶ) |
| 一般型 | 従業員規模別750万〜8,000万円(大幅賃上げ特例で最大1億円) | 1/2(小規模事業者は2/3) | 第7回: 2026/7/1〜7/31 17:00(次の第8回は8月中旬公募開始・10月中旬締切予定) |
※対象製品・要件はカタログと公募要領で確認
カタログ注文型は公募締切に縛られず動けるのが開業者向きです。詳細は省力化投資補助金の記事、無人店舗での活用イメージは無人店舗の開業完全ガイドへ。
4. 新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(2026年度に統合)
ものづくり補助金(第23次で公募終了)と新事業進出補助金(第4回で終了)が、2026年度に統合されて生まれた大型制度です。既存事業を持つ人の新分野挑戦や、大きな設備投資が対象になります。
| 枠 | 補助上限 | 補助率 |
|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠 | 2,500万円(大幅賃上げ特例で3,500万円) | 中小1/2(条件により2/3)、小規模2/3 |
| 新事業進出枠・グローバル枠 | 7,000万円(同9,000万円) | 新事業進出枠1/2(条件により2/3)/グローバル枠2/3 |
第1回公募: 2026/6/29公募開始、申請受付2026/9/30開始・締切2026/10/30 18:00(全枠共通。当初は受付8/31開始・締切9/30の予定だったが2026/7/17に事務局が1か月後ろ倒しに改定)
正直に書くと、創業したての事業者にはハードルが高い制度です(事業実績・付加価値額の計画が求められます)。まずは上の3つから検討し、2年目以降の投資でこの制度に戻ってくるのが現実的です。制度の解説は新事業進出補助金の記事とものづくり補助金の記事へ。
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
私が採択を受けた事業再構築補助金も、こうした統合・改編を経て今の制度につながっています。実際に申請してみると、制度改編直後の公募は様式や加点項目が前年と大きく変わっていました。改編年は「去年の採択者のフォーマット」をそのまま真似るのが通用しにくい年です。要領の原本を読み込む手間を惜しまないでください。
個人事業主でも使える?申請時のポイント
結論、ここまで紹介した補助金はすべて個人事業主も対象です(法人限定ではありません)。ただし実務では次の3点でつまずきがちです。
- 開業届は出しておく: 申請時に開業届の控えや確定申告書の写しを求められます。「開業予定」の段階では申請できない制度が大半です
- 小規模事業者の定義を確認: 持続化補助金は常時使用する従業員数(商業・サービス業5人以下など)で対象が決まります
- 副業でも申請は可能だが、事業実態が問われる: 屋号・事業用口座・帳簿など、事業として運営している実態を整えてから臨むのが無難です
店舗開業の実額シミュレーション【飲食店1,000万円の例】

「結局いくら戻るのか」を、小さな飲食店(初期費用1,000万円)のモデルケースで試算します。筆者の試算(筆者の見解)であり、採択を保証するものではありません。
| 費目 | 金額 | 充当しうる補助金 | 戻る目安(採択時) |
|---|---|---|---|
| 内装・厨房設備 | 500万円 | 原則対象外 → 創業融資で調達 | 0円 |
| 券売機・セルフレジ | 150万円 | 省力化(カタログ注文型) 1/2 | 75万円 |
| 予約・会計・POSソフト | 60万円 | デジタル化・AI導入 1/2〜 | 30万円 |
| チラシ・HP・看板 | 90万円 | 持続化〈創業型〉 2/3 | 60万円 |
| 運転資金 | 200万円 | 補助金対象外 | 0円 |
| 合計 | 1,000万円 | — | 約165万円 |
※対象経費の区分・併用可否は制度ごとに異なります
ここから読み取ってほしいのは2点です。
- 初期費用の大半(内装・運転資金)は補助金の対象外。だから融資と自己資金の設計が先
- 戻る約165万円も入金は開業の後、数カ月〜半年以上先。それまでの資金繰りは自力です
自治体の創業支援も見逃さない
国の制度に加えて、自治体には創業者向けの手厚い支援があります。
- 東京都 創業助成事業: 上限400万円(下限100万円)・助成率2/3。令和8年度第2回は申請受付2026/9/29〜10/8。最新の回次・締切は公式サイトで確認を
- 起業支援金(地方創生): 東京圏以外での起業等が対象。最大200万円、移住支援金との併用でさらに最大100万円が通例です。内閣府 地方創生から各道府県の窓口へ
- 市区町村の創業補助: 家賃補助・店舗改装補助など独自制度を持つ自治体が多数あります。「自治体名+創業+補助金」で検索し、商工会議所にも相談してみてください
自治体制度の探し方は創業者向け補助金の記事でも詳しく解説しています。
人を雇うなら厚労省系の「助成金」もチェック
開業して従業員を雇う段階になったら、経産省系の補助金とは別枠で、厚生労働省系の雇用助成金が視野に入ります。採択制の補助金と違い、要件を満たせば原則受給できるのが特長です。
| 制度 | 使いどころ |
|---|---|
| キャリアアップ助成金 | 有期雇用・パートの従業員を正社員化したとき |
| 業務改善助成金 | 事業場内の最低賃金を引き上げ、あわせて設備投資をするとき |
| トライアル雇用助成金 | 職業経験の少ない人を一定期間の試行雇用で受け入れたとき |
金額・要件は毎年度見直されます。厚生労働省 事業主向け助成金ページで最新の支給要領を確認してください。
ひとりで開業する場合はいったん読み飛ばして構いません。雇用を始めるタイミングで戻ってきてください。
申請から入金までの流れと採択のコツ

流れは「公募要領の確認→申請→採択→交付決定→事業実施→実績報告→入金」。押さえるべき実務ポイントは3つです。
- 交付決定前に発注・契約したものは補助対象外。フライングした瞬間にその経費は消えます(申請の落とし穴)
- 採択から入金まで4〜7カ月が実務の相場感。この間の支払いを支えるつなぎ資金の設計をセットで
- 採択率は制度・公募回で大きく変動します。実態と落ちたときの動き方は採択率の記事、筆者が採択までにやったことは採択体験記にまとめています
なお、不採択で多いのは「対象経費・加点書類など公募要領の読み違い」「数字の根拠が弱い収支計画」「ターゲットと提供価値が曖昧な計画」の3パターンです(筆者の見解)。裏を返せば、要領の熟読と数字の裏づけだけで差がつきます。
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
実際に申請してみると、いちばん苦しいのは書類づくりではなく「交付決定を待つ時間」と「入金までの立て替え」でした。私の場合も設備費は全額を先に支払っています。審査していた側の実感でも、ここで資金繰りを崩す事業者は珍しくありません。補助金は攻めの道具ですが、財布は守りで設計してください。
注意点:後払い・課税・「補助金ありき」にしない
最後に、もらった後の落とし穴を3つ。
- 補助金は課税対象です(個人は事業所得、法人は益金)。設備購入なら圧縮記帳という選択肢もあります。詳しくは補助金と税金の記事へ
- 消費税分の返還が必要になる場合があります(補助額の算定と消費税の関係は公募要領に明記されています)
- 不採択でも成立する資金計画にしておくこと。採択率は10割ではない以上、補助金は計画の前提ではなく上振れ要素です
よくある質問
Q. 開業前でも申請できますか?
国の補助金は原則、開業(開業届・登記)後でないと申請できません。開業前に使えるのは創業融資と一部の自治体制度です。持続化補助金〈創業型〉も「開業済み+特定創業支援の修了」が前提です。
Q. 複数の補助金は併用できますか?
制度が違えば併用は可能ですが、同一の経費に複数の補助金を重ねることはできません。上のシミュレーションのように費目ごとに使い分けます。
Q. 採択率はどのくらいですか?
制度・公募回によって大きく異なり、公表実績で判断するしかありません。最新の傾向は採択率の記事で追っています。
Q. 申請代行に頼むべきですか?
持続化補助金クラスなら自力申請が十分可能です(商工会議所の無料支援があります)。大型制度で支援を受ける場合も、報酬体系と実績の開示を確認し、「採択保証」をうたう業者は避けてください(そのような保証は制度上あり得ません)。
まとめ:次にやることは3つ
- タイミングマップで自分が使える制度を2〜3個に絞り、公式サイトの公募要領をブックマークする
- 開業予定日から逆算して、特定創業支援の受講と融資相談の予定を入れる
- 公募スケジュールはミラサポplusと中小機構 補助金活用ナビで定点観測する
制度ごとの深掘りは補助金データベースから。あなたの開業計画に合う一本を見つけてください。
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この記事の執筆・監修|DK(元銀行員・FP2級)
元地方銀行員(融資審査7年・医療機関向け融資専門)。FP2級・日商簿記2級・証券外務員。事業再構築補助金の採択・交付を受け、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営。飲食店の開業・業態転換も経験。金融ライター歴10年以上・執筆数千本。
