制度解説

車両購入に使える補助金は?個人事業主・法人の現実的な選択肢を元銀行員が解説

本記事はアフィリエイト広告を含みます

「配達用の軽バンも、営業車も、補助金で買えないか」——開業・独立の相談では、設備投資の一環として車両購入を考える方が少なくありません。融資審査の現場でも、事業計画の資金使途に車両が入った申込書を何度も見てきました。

結論を先に言うと、車両購入に使える補助金はかなり限定的です。「汎用性が高く、事業以外にも転用できる」という理由で、多くの制度が車両を対象経費から外しています。この記事では、車両購入で名前が挙がりやすい主要制度を一次情報ベースで整理し、それでも使える例外パターンと、補助金に頼れない場合の現実的な資金調達を元銀行員の視点で解説します。

この記事で得られること
– 主要5制度の車両購入の可否を一枚で見渡せる早見表
– CEV補助金が自家用登録の車両に限られるという一次情報の要件
– 業務改善助成金が令和8年度から普通車両を対象外にしたという最新の変更点
– 持続化補助金で車両が例外的に認められる条件と、認められないケースの見分け方
– 補助金に頼れない場合の、元銀行員が勧める3つの資金調達ルート

結論を先に
1. 事業用登録(緑・黒ナンバー)の車両で使える補助金は、現時点でほぼ無いに等しい
2. 例外は「福祉車両などの特殊用途自動車」「その車両でなければ事業が成立しない移動販売車」など、条件がかなり狭い
3. 車両調達は補助金ではなく、公庫の設備資金・カーリース・自治体独自の福祉車両補助で組み立てるのが現実的

車両購入に補助金は使える?結論と5制度の早見表

まず全体像です。開業・経営の相談でよく名前が挙がる5つの制度について、車両購入の可否を一枚にまとめました。

図解1: 制度別・車両購入の可否早見表
制度 事業用車両の扱い カギとなる条件
CEV補助金(電動車) ✕ 原則対象外 新車新規登録で自家用の車両に限る
業務改善助成金 △ 特殊用途車両のみ 令和8年度から普通車両は対象外に変更
小規模事業者持続化補助金 △ 原則対象外・例外あり 「その車両でなければ事業ができない」場合のみ
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 ✕ 原則対象外 汎用性の高い資産という位置づけ
自治体独自の福祉車両補助 ○ 制度による 自治体・対象者要件は地域ごとに異なる

ここから重要な2つの制度について、要件を一次情報から確認していきます。

CEV補助金は車両購入の補助金になる?→事業用登録の車両は対象外

電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)の購入で必ず名前が挙がるのが、経済産業省のクリーンエネルギー自動車導入促進補助金(通称CEV補助金)です。個人・法人どちらも申請できる制度ですが、車両の登録区分に重要な条件があります。

②補助対象者 対象車を購入する個人、法人、地方公共団体等
※新車新規登録(新車新規検査届出)で、自家用の車両に限ります
——経済産業省「令和5年度当初予算案 クリーンエネルギー自動車導入促進補助金 補助事業者募集要領」

つまり、事業用登録(緑ナンバー・黒ナンバー)にした車両は対象外というのが制度の原則です。個人事業主やフリーランスであっても、自家用登録のまま業務にも使う車であれば申請の土俵に乗りますが、配送業・介護タクシーなど事業用登録が必須の用途では使えません。この「自家用車両に限る」という考え方は年度をまたいで継続しており、直近の令和7年度補正予算でも同様の原則です。出典: 経済産業省「令和5年度当初予算案 クリーンエネルギー自動車導入促進補助金 補助事業者募集要領」(要件の考え方は継続)。

車種区分 基本の補助上限額 加算額(上限)
EV 125万円 最大5万円
軽EV 55万円 最大3万円
PHEV 80万円 最大5万円
FCV 145万円 最大5万円

金額は令和8年4月1日以降に新車新規登録される車両向けの基準です(車種ごとの詳細な補助額は個別に公表されます)。出典: 経済産業省「令和7年度補正予算 クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の概要」同・制度ページ(令和8年9月4日時点)。予算の執行状況により申請受付が早期終了することもあるため、検討している方は早めに動くべきです。

キッチンカーのように「その車両自体が店舗」という業態は、CEV補助金とは別の考え方で車両を検討することになります。詳しくはキッチンカー開業の補助金の記事で解説しています。

業務改善助成金は使える?→令和8年度から普通車両が対象外に

スタッフの時給を引き上げつつ設備投資をする業務改善助成金は、これまで一部で車両購入にも使われてきた制度です。しかし令和8年度に、車両の扱いが大きく変わりました。

助成対象経費の特例となっていた自動車(特殊用途自動車を除く)は、助成対象外となりました。
——厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」

つまり普通の営業車・乗用車は令和8年度から助成対象外です。一方で、厚労省の案内には対象経費の例として「リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮」が明記されており、福祉車両など特殊用途自動車は引き続き対象になり得ます。介護・送迎系のサービスで、賃上げとセットでリフト付き車両を導入するようなケースが該当します。出典: 厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」(PDF)

助成上限額は最大600万円(10人以上の賃上げを行う特例事業者・90円コースの場合)で、助成率は事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。コース別の金額表や、キャリアアップ助成金など他の雇用系助成金との併用については人を雇う助成金の記事で詳しく解説しています。

年度 自動車(車両)の扱い
令和7年度まで 生産性向上に直結すると認められれば、特例的に対象になり得た
令和8年度から 特殊用途自動車を除き、助成対象外に変更

過去の解説記事や資料の中には「業務改善助成金は車両購入にも使える」と紹介しているものがありますが、令和7年度までの情報である可能性があります。申請前には必ず最新の交付要綱で確認してください。

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

融資審査でも「汎用性の高い資産」は担保評価が伸びにくいという感覚があります。車もまったく同じで、事業でも私用でも使えてしまう資産に税金や公費を投じることには、制度側も一貫して慎重です。「福祉車両」「移動販売車のベース車両」のように、用途が事業に固定されている場合だけ扉が開く、と捉えておくと制度の理解がぶれません。

持続化補助金・新事業進出補助金で車両が認められる例外パターン

小規模事業者持続化補助金の対象経費区分は、機械装置等費・広報費・ウェブサイト関連費・展示会等出展費・旅費・新商品開発費・借料・委託外注費で構成されており、自動車そのものの購入費という区分はありません(出典: 中小企業庁「小規模事業者持続化補助金(通常枠)」案内資料)。新事業進出・ものづくり商業サービス補助金(旧ものづくり補助金・中小企業新事業進出補助金が統合された制度)でも、車両は同じ理由で原則対象外という整理です。

ただし実務上、完全にゼロというわけではありません。判断のポイントは「その車両でなければ、その事業が成立しないと言えるか」です。移動販売車のベース車両など、改装によって特定の事業目的専用になっている車両は、例外的に補助対象として認められる余地があります。キッチンカー開業の補助金の記事では、この境界線をより詳しく解説しています。

図解2: 車両購入で補助金を検討する判断フロー
①自家用登録か、事業用登録か ②自家用の電動車ならCEV補助金を検討 ③福祉車両等の特殊用途車なら業務改善助成金を検討 ④「その車でなければ事業不可」と言えるなら持続化補助金等を相談

①〜④のどれにも当てはまらない場合は、補助金ではなく別の資金調達ルートで考える必要があります。後半で具体的な選択肢を紹介します。

介護タクシー・送迎サービスは自治体独自の福祉車両補助を確認する

介護タクシーや送迎サービスのように、車両そのものが事業の中核になる業態では、国の補助金より先に確認すべきものがあります。都道府県・市区町村が個別に用意している福祉車両の導入補助や、社会福祉法人向けの車両整備事業補助です。

  • 制度の有無・補助率・上限額は自治体ごとにまったく異なり、実施していない自治体もあります
  • 対象者も「障害福祉サービス事業者」「介護保険サービス事業者」など、自治体が定める要件に限られるのが一般的です
  • 年度によって予算枠が変わるため、事業を計画する段階で、開業予定地の自治体の福祉担当窓口に直接確認するのが最も確実です

全国一律の金額を提示できる性質の制度ではないため、この記事では「自治体独自の枠がある」という事実と探し方までにとどめます。認定支援機関や商工会・商工会議所に相談すると、地域の制度を横断的に教えてもらえることがあります。

問い合わせの際は、次の3点をセットで聞くと話が早く進みます。①今年度に該当する補助メニューがあるか、②対象者の条件(事業者の種別・利用者の要件など)、③予算の残額と申請の締切です。年度途中で予算上限に達し、募集が早期終了する制度も珍しくありません。

補助金に頼れないときの車両調達——元銀行員が勧める3つの選択肢

ここまで見てきた通り、車両購入で補助金を使えるケースはかなり限られます。「補助金が使えないなら車は買えない」ではなく、資金調達の設計を変える発想が必要です。

① 日本政策金融公庫の設備資金として組み込む

開業・創業融資は、店舗の内外装費だけでなく、事業に必要な車両の購入費も設備資金として申込みに含められます。単独で車両ローンを組むより、事業計画全体の中に位置づけたほうが、資金使途の説明がしやすくなります。融資の仕組みと審査のポイントは創業融資の記事で解説しています。

② カーリース・サブスクで初期費用を抑える

まとまった現金を用意せず、月々の固定費として車両コストを平準化する方法です。開業直後で資金繰りに余裕がない時期は、所有よりリースのほうがつなぎ資金への負担を軽くできます。契約期間中の距離制限や原状回復費用など、通常の賃貸借とは違う契約条件は事前に必ず確認してください。

③ 中古車・登録済み未使用車を活用する

新車にこだわらなければ、初期投資は大きく圧縮できます。事業計画書に車両費を書く際は、見積書の相見積もりを取り、金額の妥当性を説明できるようにしておくと審査でも印象がよくなります。相見積もりの取り方は相見積もり完全ガイド、事業計画書での書き方は事業計画書の書き方の記事を参考にしてください。

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

審査室にいた頃、車両費を丸ごと運転資金枠に紛れ込ませた申込書をよく見ました。しかし設備資金と運転資金では審査の見方も返済期間の考え方も違います。車両は「いくらの、どの車を、なぜ必要とするのか」を見積書つきで示すだけで、稟議の通りやすさは変わります。補助金が出ない前提で、最初から融資計画に正しく組み込んでおくのが結局いちばんの近道です。

よくある質問

Q. 個人事業主が自家用車を事業でも使う場合、CEV補助金は使えますか?
新車新規登録が自家用であれば申請の対象になり得ます。ただし事業用登録(緑・黒ナンバー)に変更している車両は対象外です。最新の要件は経済産業省の制度ページで確認してください。

Q. 業務改善助成金で以前使えた普通車両は、もう一切使えませんか?
令和8年度からは特殊用途自動車を除いて対象外です。福祉車両やリフト付き車両など、生産性向上に直結する特定用途の車両は対象になり得ます。詳しいコース区分は業務改善助成金の記事で解説しています。

Q. キッチンカーのベース車両はどの制度で補助を受けられますか?
持続化補助金や新事業進出補助金で、移動販売という事業目的に直結する車両として例外的に認められる余地があります。詳しくはキッチンカー開業の補助金の記事をご覧ください。

Q. 車両購入を補助金なしで進める場合、何から準備すればいいですか?
まず見積書を複数社から取り、金額の妥当性を示せる状態にすることです。そのうえで創業融資の設備資金枠に組み込むか、カーリースで初期費用を抑えるかを検討してください。

Q. 自家用登録の車を事業用登録(緑・黒ナンバー)に変えると何が変わりますか?
車庫証明や任意保険の区分が変わり、多くの場合で保険料は上がります。一方で緑・黒ナンバーへの変更後は、CEV補助金のような「自家用限定」の制度は対象外になります。事業内容が届出・許可を要する運送業に該当するかどうかも含めて、登録区分は運輸支局や保険代理店に事前確認しておくと安全です。

まとめ|車両購入の補助金は「例外を探す」より「調達方法を変える」発想で

  • CEV補助金は自家用登録の車両に限定。事業用登録(緑・黒ナンバー)は対象外
  • 業務改善助成金は令和8年度から普通車両が対象外に変更。対象は福祉車両など特殊用途自動車のみ
  • 持続化補助金・新事業進出補助金は「その車両でなければ事業ができない」場合のみ例外的に検討可能
  • 介護タクシー等は自治体独自の福祉車両補助を個別に確認する
  • 該当しない場合は、公庫の設備資金・カーリース・中古車活用で現実的な資金計画を立てる

車両を含む開業全体の資金計画は開業で使える補助金一覧個人事業主が使える補助金一覧もあわせて確認してください。減価償却など車両購入後の税務処理は補助金と税金の記事で扱っています。

PR 開業届をこれから出すなら

補助金の多くは開業届(または登記)が申請の前提です。フォーム入力だけで開業届・青色申告承認申請書を無料作成できるサービスを使えば、開業手続きは最短で済みます。

個人事業主の開業手続きをラクに!【マネーフォワード クラウド開業届】

この記事の執筆・監修|DK(元銀行員・FP2級)

元地方銀行員(融資審査7年・医療機関向け融資専門)。FP2級・日商簿記2級・証券外務員。事業再構築補助金の採択・交付を受け、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営。飲食店の開業・業態転換も経験。金融ライター歴10年以上・執筆数千本。

運営者について

DK

DK 元銀行員・FP2級|補助金採択で無人サロン開業

地方銀行で法人融資・融資審査を7年担当(医療機関向け融資専門)。独立後は金融ライターとして10年以上・数千本を執筆。事業再構築補助金の採択・交付を受けて24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営中。飲食店の開業・業態転換も経験。「貸す側」「借りる側」「補助金を使う側」の3つの立場を実体験した視点で解説しています。保有資格: FP2級/日商簿記2級/証券外務員。