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店舗改装の見積もりは、小さな店でも数百万円になります。実は「店舗改装補助金」という単独の制度はなく、改装の目的に合った補助金を選んで、内装工事費を対象経費に入れるのが正しいやり方です。筆者は補助金の採択・交付を受けて、内装・カメラ等約1,900万円の工事を実際にカバーした元銀行員。制度の一覧だけでなく、工事契約の順序まで実務ベースで解説します。
この記事で得られること
– 自分の改装がどの補助金に合うかわかる「目的別」逆引きマップ
– 各制度の上限・補助率・直近スケジュール(一次情報リンク付き)
– 対象になる工事・ならない工事の判断軸(単なる修繕はなぜNGか)
– 約1,900万円の内装工事を補助金でカバーした筆者の見積・契約・着工の実務結論を先に
1. 補助金は改装「そのもの」ではなく改装の目的につく。販路開拓=持続化補助金/省人化=省力化投資補助金/業態転換込み=統合補助金(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)
2. 単なる老朽化対応・美装だけの工事は、どの補助金でも対象外の傾向
3. 交付決定前に工事契約・着工したら全額対象外。改装は補助金事故が最も起きやすい経費です
店舗改装に補助金は使える?最初に知っておく3原則

内装業者やリフォーム会社に相談する前に、補助金側の「型」を知っておくと失敗しません。原則は3つです。
- 補助金は「工事」ではなく「事業の目的」につく — 審査で見られるのは壁紙の色ではなく、「この改装で売上や生産性がどう変わるか」という計画です
- 後払いが原則 — 工事代金はいったん全額自己負担し、実績報告の後に補助分が振り込まれます。入金まで半年〜1年かかる前提でつなぎ資金を設計します
- 交付決定前の契約・着工はNG — 補助金ごとに決められた「交付決定」より前に発注・契約・着工した工事は、原則として補助対象になりません
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
銀行員時代、「補助金が出るはずだったのに対象外になった」という相談の原因は、ほぼ着工タイミングの誤りでした。工事は物件の都合で急ぎたくなるものですが、補助金を使うなら**スケジュールの主導権は公募日程にある**と考えてください。
【目的別逆引き】あなたの改装にはどの補助金が合う?
「店舗改装 補助金」で迷う最大の理由は、制度が目的別に縦割りだからです。自分の改装の目的から逆引きするのが最短ルートです。

| 改装の目的 | 使える可能性がある制度 | 上限の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 新規客を増やす・売上をつくる改装 | 持続化補助金 | 50万〜最大250万円 | 客席増設、テイクアウト窓口、看板・ファサード、バリアフリー化 |
| 省人化・無人化のための改装 | 省力化投資補助金 | カタログ型 最大1,500万円/一般型 最大1億円 | 券売機・自動精算機・セルフレジ等の設備導入(工事単体は不可の傾向) |
| 業態転換・新事業を含む大規模改装 | 統合補助金(新事業進出補助金の後継) | 最大7,000万円(特例9,000万円) | 建物費(改修)が対象経費。飲食→無人店舗への転換など |
| 賃上げとセットの設備投資 | 業務改善助成金 | 最大600万円 | 最低賃金引上げ+生産性向上の機器・設備 |
| 商店街・地域での開業改装 | 自治体独自(東京都の例など) | 数十万〜800万円台 | 商店街の空き店舗活用、地域要件を満たす開業 |
※金額は概要です。正確な上限・補助率は次章の各制度と一次情報で確認してください。
同じ「内装工事」でも、計画の描き方次第で入り口の制度が変わるのがポイントです。開業全体の資金設計から考えたい人は開業で使える補助金一覧を先に読んでください。
制度別に見る上限・補助率・スケジュール【2026年最新】
持続化補助金|販路開拓の改装の第一候補
小規模事業者の「売上をつくる取り組み」を支援する制度で、店舗改装(外部発注する内装工事)は「委託・外注費」区分で対象になります。什器や厨房機器は「機械装置等費」です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助上限 | 一般型(通常枠)50万円。特例併用で最大250万円/創業型(創業1年以内)200万円(インボイス特例250万円) |
| 補助率 | 2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4) |
| 直近スケジュール | 申請受付2026年11月5日〜12月15日。商工会議所の様式4発行は12月4日締切 |
出典: 中小企業庁 第20回公募/同 創業型第4回/補助金事務局(商工会議所地区)
注意点は2つ。「販路開拓のための改装」であることが大前提(理由は次章)で、一定額を超える工事は2社以上の相見積が求められます。制度の全体像は持続化補助金の解説記事へ。
省力化投資補助金|省人化・無人化の改装なら
人手不足対応の設備投資を支援する制度です。誤解が多いのですが、内装工事一式そのものは対象経費の中心ではありません。対象は券売機・自動精算機・配膳ロボット・スマートロックといった省力化設備で、改装はその導入に付随する位置づけです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| カタログ注文型 | 随時受付。上限は従業員5名以下500万円(賃上げ特例750万円)〜21名以上1,000万円(1,500万円)。補助率1/2以下 |
| 一般型(第8回) | 第7回は2026年7月31日17時で受付終了。第8回は8月18日に公募要領を公開し公募開始、申請ポータルの受付開始は9月中旬・締切は10月中旬予定。上限750万円〜最大1億円(大幅賃上げ特例時)。補助率1/2(小規模事業者等2/3) |
出典: 省力化投資補助金 公式(カタログ注文型)/同(一般型)/一般型スケジュール
「無人店舗化のための改装」を考えているなら、設備は省力化投資補助金・販促は持続化補助金と経費を分けて組み合わせる発想が有効です(同一経費の重複申請はできません)。詳しくは省力化投資補助金の解説と無人店舗の開業ガイドへ。
統合補助金(新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)|業態転換込みの大規模改装
業態転換や新事業進出を伴う大規模改装なら、対象経費に建物費(改修を含む)が明記されているこの制度が本命です。筆者が使った事業再構築補助金の流れをくむ制度で、新事業進出補助金の単独公募は第4回(2026年6月19日締切)で終了し、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に統合されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 第1回スケジュール | 申請受付2026年9月30日開始・締切10月30日18時(当初は受付8月31日開始・締切9月30日の予定だったが2026/7/17改定)。採択発表2027年1月頃 |
| 新事業進出枠 | 上限7,000万円(大幅賃上げ特例9,000万円)・下限750万円。補助率1/2(条件により2/3) |
出典: 統合補助金 公式サイト/公募スケジュール/中小企業庁 第1回公募要領公開
下限750万円という規模感のとおり、単なる改装ではなく事業計画そのものの審査になります。計画づくりは事業計画書の書き方を参考にしてください。
業務改善助成金|賃上げとセットなら
厚生労働省の制度で、事業場内最低賃金の引上げ+生産性向上に資する設備投資を行うと、費用の一部が助成されます。上限は最大600万円(引上げ額・人数で変動)、助成率3/4(事業場内最低賃金1,050円未満の事業場は4/5)。令和8年度は2026年9月1日に申請受付開始とされています。
出典: 厚生労働省 業務改善助成金
改装単体では使えませんが、従業員のいる店で「賃上げは既定路線」なら検討価値があります。
自治体独自の補助金|東京都の例
国の制度に加えて、都道府県・市区町村にも店舗改修系の助成があります。東京都の例です。
- 若手・女性リーダー応援プログラム助成事業: 都内商店街で開業する女性または39歳以下の男性が対象。店舗の新装・改装工事費を含む事業所整備費と店舗賃借料が対象で、助成率3/4以内・最大844万円。出典: 東京都創業NET/東京都報道発表(2026年4月)
- 商店街起業・承継支援事業: 同じく都内商店街での開業・事業承継向け(年齢・性別要件なしの一般版)
市区町村レベルでも小規模な店舗改修助成(数十万円規模)を設ける例があります。「自治体名+店舗改修+補助金」での地元検索を忘れずに行ってください。国の補助金と違い、助成率が高く競争率が低いことがあります。
対象になる工事・ならない工事|「単なる修繕」はなぜNGか
どの補助金にも共通する審査側の理屈はシンプルです。補助金は税金なので、「現状維持」ではなく「事業を良くする投資」にしか出せない——これだけです。
| 工事の内容 | 対象になる傾向 | 理由 |
|---|---|---|
| 客席レイアウト変更・個室化 | ○ | 客単価・回転率の向上=販路開拓の計画にできる |
| テイクアウト窓口・イートイン新設 | ○ | 新しい客層・販売方法の獲得 |
| バリアフリー化・トイレ改装 | ○ | 新規客層の獲得として説明できる(単なる老朽化更新だと×) |
| 看板・外装・ファサード刷新 | ○ | 集客導線の改善 |
| 省人化設備の導入(券売機・セルフレジ等) | ○ | 生産性向上(制度は省力化系) |
| 雨漏り修理・設備の故障交換 | × | 単なる修繕=現状維持で、事業拡大の説明がつかない |
| 壁紙・床の張替えだけの美装 | × | 同上。ただし業態転換や客層転換の計画の一部なら○になり得る |
| 店舗兼住宅の住居部分 | × | 事業用でない部分は対象外 |
| 交付決定前に着工した工事 | × | 時期ルール違反。内容が良くても対象外 |
※○×は各公募要領の考え方に基づく傾向です。最終判断は申請先の公募要領・事務局での確認が前提です。
監修者DKメモ|元銀行員・FP2級
審査側の目線で言うと、同じ「壁紙の張替え」でも、「古くなったので替える」は落ち、「ターゲットを変えるために内装コンセプトを刷新する」は通り得ます。**工事の中身ではなく、計画書で語る目的が対象・対象外を分ける**——ここが店舗改装×補助金の核心です。
【実体験】約1,900万円の内装工事を補助金でカバーした実務

筆者は事業再構築補助金(現在の統合補助金の前身)の採択・交付を受けて、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業しました。このとき内装工事・カメラ等の設備で約1,900万円(個室化・電源工事・照明・防音・カメラ)を投じています。総工費約3,000万円に対して交付は約2,000万円。内訳の全体は開業費用の記事で公開しています。
改装費を補助金でカバーする実務で、経験上重要だった順に3つ挙げます。
1. 見積は「費目分解」で取る
補助金の実績報告では、工事一式◯◯万円というどんぶり見積は通りません。「電気工事」「間仕切り工事」「防音工事」など費目ごとに金額が分かれた見積書を業者に依頼してください。相見積(2社以上)が要件になる制度・金額帯もあります。補助金に慣れた業者かどうかは、この依頼への反応でわかります。
2. 契約・着工は交付決定の後。「採択」ではまだ動けない
最大の落とし穴です。採択発表→交付申請→交付決定という段階があり、工事契約・発注・着工が許されるのは原則交付決定の後です。採択の通知で安心して工事契約を結ぶと、その工事は補助対象から外れます。筆者も物件の引渡し日と公募スケジュールの調整には最も神経を使いました。採択後の手続き全体は採択後の手続きガイドにまとめています。
3. 支払いの証拠を工事の前から残す
実績報告では、見積書・発注書・契約書・請求書・振込記録・工事前後の写真まで一式の提出を求められます。現金払いは避けて銀行振込に統一し、工事前の現況写真を撮っておく——着工前からの記録が、入金までの時間を大きく左右します。

居抜きと改装、どちらが得か|費用構造で比較する
「補助金で改装」の前に、そもそも居抜き物件で改装費自体を減らす選択肢と比較しておくべきです。両方を経験した立場で整理します。
| 比較軸 | スケルトン+改装(補助金活用) | 居抜き |
|---|---|---|
| 初期の工事費 | 高い(数百万〜数千万円) | 低く抑えられる(前店の設備を流用) |
| 補助金との相性 | 良い(工事費が対象経費になる) | 造作譲渡代は補助対象になりにくい傾向 |
| 自由度 | 高い。業態・動線を設計できる | 前店のレイアウトに縛られる |
| 資金繰り | 後払いの立替負担が大きい | 立替そのものが小さい |
| 隠れリスク | 工期遅延・公募日程との調整 | 設備の老朽化・電源容量不足 |
結論はこうです。計画に「新しさ」があり立替体力があるなら改装×補助金、スピードと少額開業を優先するなら居抜き。筆者の場合は無人運営に必要な個室化・防音・電源が居抜きでは実現できず、スケルトンからの改装+補助金を選びました。自己資金からの逆算は自己資金の記事が参考になります。
申請から入金までの流れ|改装は資金繰りが9割

- 制度選びと公募日程の確認 — 目的別逆引きで制度を絞り、締切から工事時期を逆算
- 計画書作成・見積取得 — 費目分解見積+相見積。GビズIDの取得も先に(申請の落とし穴)
- 申請→採択→交付申請→交付決定 — ここまで数か月。着工はこの後
- 工事実施・支払い — 証拠書類を揃えながら実施
- 実績報告→確定検査→入金 — 申請から入金まで通算で半年〜1年超
つまり工事代金は全額をいったん自分で払う必要があります。手元資金で足りない場合は、創業融資やつなぎ資金を先に設計するのが正しい順序です。筆者も融資と自己資金で工事代金を立て替え、補助金は後から戻る前提で資金繰りを組みました。
よくある質問
Q. 「店舗改装補助金」という制度はありますか?
国の制度としては存在しません。改装の目的に合う補助金(持続化・省力化・統合補助金など)の対象経費に工事費を入れる形になります。自治体には「店舗改修助成」の名称の制度がある場合があります。
Q. 個人事業主でも使えますか?
持続化補助金・省力化投資補助金などは個人事業主も対象です(開業届が前提)。制度ごとの要件は開業で使える補助金一覧で確認してください。
Q. 改装費の全額が戻りますか?
戻りません。補助率(1/2〜3/4程度)と上限があり、対象外経費も差し引かれます。「かかった費用の一部が、後から戻る」制度です。
Q. すでに工事を始めてしまいました。今からでも申請できますか?
着工済みの工事は原則対象外です。ただし、これから行う別の工事・設備を切り分けて申請できる場合はあります。事務局や認定支援機関に相談してください。
Q. 複数の補助金を併用できますか?
同じ経費への重複はできませんが、経費を分ければ組み合わせは可能です(例: 内装は統合補助金、販促は持続化)。併用設計は計画段階で決める必要があります。
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この記事の執筆・監修|DK(元銀行員・FP2級)
元地方銀行員(融資審査7年・医療機関向け融資専門)。FP2級・日商簿記2級・証券外務員。事業再構築補助金の採択・交付を受け、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営。飲食店の開業・業態転換も経験。金融ライター歴10年以上・執筆数千本。
