制度解説

整骨院・整体院開業の補助金|柔道整復師の届出義務と対象になる経費を元銀行員が解説

本記事はアフィリエイト広告を含みます

「整骨院を開業したいが、補助金は美容室やネイルサロンと同じように使えるのか」という相談には、最初に整理しておくべき前提があります。整骨院(接骨院)は柔道整復師法に基づく国家資格者が開設する施術所で、開設後10日以内に保健所への届出が義務づけられています。一方、「整体院」は国家資格を必要としない業態で、開業規制も大きく異なります。この違いが、使える補助金・融資の選び方にも直結します。元銀行員として生活衛生関係の融資審査にも触れ、自らも無人型のセルフ脱毛サロンを事業再構築補助金で開業した経験から、許認可の有無で資金調達の設計が変わる小規模ビジネスの型として整理します。

この記事で得られること
– 整骨院開業に必須の「施術所開設届」(柔道整復師法第19条)の届出義務と期限
– 整骨院と整体院で開業規制と補助金の使いやすさが変わる理由
– 「生活衛生貸付が使えない」業種であることの意味と代わりの資金調達先
– 持続化補助金で整骨院特有の「保険診療部分は対象外」という制約の中身

結論を先に
1. 整骨院は柔道整復師法第19条により、開設後10日以内に施術所開設届を都道府県知事(実務上は保健所)に提出する義務がある
2. 整骨院・整体院を含む施術業は生活衛生貸付の対象業種一覧に含まれておらず、資金調達は日本政策金融公庫の一般の創業融資が中心になる
3. 持続化補助金では整骨院の保険診療にかかる経費(保険診療で使う機械や、保険診療の宣伝を兼ねるチラシ等)は明確に対象外という公募要領の記載があり、対象になるのは自費部分の販路開拓経費に限られる

整骨院は「施術所開設届」が必須|柔道整復師法第19条

柔道整復師法第19条第1項は、「施術所を開設した者は、開設後十日以内に、開設の場所、業務に従事する柔道整復師の氏名その他厚生労働省令で定める事項を施術所の所在地の都道府県知事に届け出なければならない」と定めています。実務上の届出窓口は、開業予定地を管轄する保健所です。届出には開設届のほか、柔道整復師全員の免許証の写し、施術所の平面図、案内図などの添付が必要になります。届出事項に変更が生じた場合や、施術所を休止・廃止した場合も、同様に10日以内の届出が義務づけられています。無届けでの開業は法律違反にあたるため、内装工事や機器発注の前に、届出のスケジュールを開業計画に組み込んでおく必要があります。

整骨院開業の届出フロー
内装・設備の準備 開業(施術開始) 施術所開設届の提出
(開設後10日以内・保健所)

※出典は本文末尾の「出典(一次情報)」を参照。必要書類は自治体により異なる場合があるため、開業予定地の保健所に事前確認を推奨

整体院との違い|国家資格の有無で開業規制が変わる

「整骨院」「接骨院」は柔道整復師法に基づく国家資格「柔道整復師」の保有者が開設する施術所です。これに対して「整体院」は、あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師・柔道整復師という4つの法定資格行為に含まれない、いわゆる「医業類似行為」の一種として扱われ、国家資格がなくても開業できます。厚生労働省の見解では、これら民間資格・無資格の施術であっても、人体に危害を及ぼすおそれのある行為は禁止の対象になり得るとされていますが、整体そのものを直接規定する法律は存在せず、柔道整復師法のような開設届の義務も課されていません。保険診療を扱えるのは柔道整復師の施術に限られ、整体院は原則として全額自費診療になります。

整骨院(接骨院)と整体院の違い
項目 整骨院・接骨院 整体院
必要な資格 柔道整復師(国家資格) 不要(民間資格・無資格でも可)
開設届の義務 あり(柔道整復師法第19条・保健所) 法律上の開設届義務なし
保険診療 一部の負傷(骨折・脱臼・打撲・捻挫等)で可能 不可(全額自費)

※出典は本文末尾の「出典(一次情報)」を参照。保険取扱いには施術管理者に関する別途要件があるため、開業予定地の厚生局・保健所に要確認

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

融資審査の目線では、国家資格が必要な業態は「参入障壁がある分、審査担当者が業界の実情を把握しにくい」という側面があります。柔道整復師免許の写しや開設届の準備状況を事業計画書に具体的に書けるかどうかが、担当者への説得力を左右します。整体院のように資格不要の業態は、逆に「差別化の根拠」を数字と経験で示す必要が強くなります。

生活衛生貸付は使えない|一般の創業融資が資金調達の基本線

日本政策金融公庫には、飲食店営業・理容業・美容業・クリーニング業など特定の生活衛生関係の業種向けに、有利な条件が適用され得る「生活衛生貸付」があります。しかし対象業種一覧を確認すると、掲載されているのは飲食店営業・喫茶店営業・食肉販売業・食鳥肉販売業・氷雪販売業・理容業・美容業・公衆浴場業・旅館業・興行場営業・サウナ営業・クリーニング業の12業種で、整骨院・接骨院・整体院はいずれも含まれていません。理容業・美容業は同貸付の対象で融資限度額7,200万円まで利用できますが、施術業はこの優遇枠の外にあります。

そのため、整骨院・整体院の資金調達は日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金など一般の創業融資が中心になります。自己資金の目安つなぎ資金の設計も合わせて確認しておくと、審査の準備がスムーズです。

持続化補助金は使える?整骨院特有の「保険診療部分は対象外」という制約

小規模事業者持続化補助金は、内装工事・什器備品・チラシやホームページ制作といった「売上をつくる取り組み」に使える、小さな事業者にいちばん身近な補助金です。一般型(通常枠)は上限50万円・補助率2/3ですが、開業から1年以内なら創業型が使え、上限が広がります。ここで整骨院特有の注意点があります。公募要領は、補助対象外となる経費の一つとして「保険適用診療にかかる経費(薬局、整骨院や鍼灸院等の保険診療で使用する機械や保険診療の宣伝も兼ねるチラシ等)」を名指しで明記しています。これは、保険診療が公的医療保険からの診療報酬という別の公的制度で既に支えられているため、補助金と重複させないという整理です。したがって整骨院が持続化補助金を使う場合、対象になるのは自費メニュー(施術以外の物販、自費リハビリ等)の販路開拓に関する経費に限られるという前提で計画を組む必要があります。

整体院は制約が少ない|全額自費事業ゆえの使いやすさ

整体院は保険診療を扱わない全額自費の事業であるため、上記のような「保険診療部分は対象外」という制約を受けません。内装工事・施術用ベッドやタオルウォーマーなどの什器・予約サイトやチラシといった販路開拓の取り組みは、持続化補助金の対象経費の枠組みに沿って検討しやすくなります。ただし、単なる取替え更新や、事業以外にも使える汎用品(パソコン・事務用什器等)は整骨院・整体院を問わず対象外です。発注・契約・支払いは交付決定後に行う必要があり、開業前にすでに発注・購入したものも対象になりません。

事業再構築補助金・自治体独自の助成金も選択肢に

大規模な業態転換(例えば整体院に自費リハビリ特化の新サービスを追加する、複数店舗展開に合わせて新業態を立ち上げるなど)を計画している場合は、事業再構築補助金の後継にあたる新事業進出補助金(単独公募は終了し、現在は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」に統合)の対象になり得るかも確認する価値があります。ただし要件のハードルは持続化補助金より高く、認定経営革新等支援機関との事業計画の共同策定が必須です。加えて、国の補助金は保険診療や汎用品を対象外にする傾向がある一方、自治体独自の創業支援助成金では業種を問わず対象にする例もあります。出店を検討している市区町村の商工課・産業振興課のページ、または開業で使える補助金一覧で紹介している探し方を参考に、地域の公募情報を個別に確認してください。

DK

監修者DKメモ|元銀行員・FP2級

整骨院は保険診療と自費診療が混在する分、事業計画書では「どの売上が保険で、どの売上が自費か」を分けて書けるかどうかを、私なら融資担当者として真っ先に見ます。補助金の対象経費が自費部分に限られる以上、自費売上の伸ばし方に説得力があるかどうかが審査の分かれ目になりやすい業態です。

開業費用はいくら?内訳と相場観

複数の開業支援会社が公表している情報を突き合わせると、整骨院の開業資金は総額500万〜1,200万円程度が目安とされ、内訳では物件取得費(敷金・礼金・保証金等)、内装工事費、施術用ベッドや電気治療器などの機器・備品費が中心になります。整体院は保険請求に関わる設備が不要な分、内装や什器のグレード次第で総額を抑えやすい傾向があります。いずれも自己資金の目安を踏まえたうえで、不足分を創業融資でどう組むかを早めに設計しておくことが重要です。

資金計画の順序|補助金は「後から戻る」お金

補助金は原則後払いです。採択されても入金は実績報告のあとで、申請から半年〜1年近くかかることもあります。内装工事や施術機器のように開業日までに支払いが発生する費用は、自己資金と創業融資で先に組み、補助金は対象になり得る経費に絞って申請し、入金までの立替をつなぎ資金でカバーする設計が現実的です。主要制度の採択率申請前に知っておきたい落とし穴も合わせて確認しておくと、計画の精度が上がります。

よくある質問

Q. 整骨院の開業に必要な届出は何ですか?
柔道整復師法第19条に基づき、開設後10日以内に施術所開設届を、施術所所在地の都道府県知事(実務上は保健所)に提出する必要があります。整体院にはこの法律上の開設届義務はありません。

Q. 整骨院・整体院は生活衛生貸付を使えますか?
使えません。整骨院・接骨院・整体院はいずれも生活衛生貸付の対象業種一覧に含まれていないため、資金調達は日本政策金融公庫の一般の創業融資が中心になります。

Q. 整骨院で持続化補助金を使う場合、何がネックになりますか?
保険適用診療にかかる経費(保険診療で使用する機械や、保険診療の宣伝を兼ねるチラシ等)が公募要領で明確に対象外とされている点です。対象になり得るのは自費メニューの販路開拓に関する経費に限られます。

Q. 整体院なら国家資格がなくても補助金を申請できますか?
持続化補助金や創業融資に、施術者本人の国家資格を直接の要件とする規定はありません。ただし人体に危害を及ぼすおそれのある施術は無資格者には認められていないため、業務範囲の見極めは別途必要です。

Q. 保険診療(受領委任)を扱うには柔道整復師免許だけで足りますか?
足りません。平成30年4月以降、保険請求(受領委任)を単独で扱う「施術管理者」になるには、柔道整復師免許に加えて資格取得後の実務経験(2024年4月以降の届出は3年間)と、厚生労働省の登録研修機関(柔道整復研修試験財団)が実施する施術管理者研修(2日間・計16時間、受講料25,000円)の修了が必要です。実務経験が不足する場合は、要件を満たす柔道整復師のもとで勤務しながら経験を積む必要があります。自費のみで開業する場合はこの要件の対象外です。詳細は開業予定地を管轄する厚生局に確認してください。

まとめ|「保険診療と自費診療の切り分け」を起点に資金計画を組む

整骨院は柔道整復師法に基づく施術所開設届が必須で、生活衛生貸付のような業種特化の優遇融資も使えません。持続化補助金を使う場合も、保険診療にかかる経費は対象外という制約があるため、自費部分の販路開拓に絞って計画を立てる必要があります。整体院は資格・届出の規制が少ない分、補助金の対象経費も比較的組み立てやすくなります。まず一般の創業融資で資金計画の土台を固めたうえで、補助金は対象になり得る経費だけを切り分けて申請する——この順序が、許認可や保険診療が絡む整骨院・整体院の資金計画では特に重要です。


出典(一次情報): 厚生労働省 柔道整復師法(昭和45年法律第19号)条文/日本政策金融公庫 生活衛生貸付(一般貸付)対象業種/日本政策金融公庫 新規開業・スタートアップ支援資金/小規模事業者持続化補助金<一般型 通常枠>第20回公募要領/厚生労働省 施術管理者の要件について

PR ホームページ・予約サイトを補助金で作るなら

集客の中心になる自社サイトは、要件を満たせば補助金の対象経費にできる場合があります。「ホームページDX」は事業者向けの本格的なサイト制作を、補助金活用の相談込みで依頼できます。

本格的な機能を搭載したホームページやECサイトが作成できる【ホームページDX】

この記事の執筆・監修|DK(元銀行員・FP2級)

元地方銀行員(融資審査7年・医療機関向け融資専門)。FP2級・日商簿記2級・証券外務員。事業再構築補助金の採択・交付を受け、24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営。飲食店の開業・業態転換も経験。金融ライター歴10年以上・執筆数千本。

運営者について

DK

DK 元銀行員・FP2級|補助金採択で無人サロン開業

地方銀行で法人融資・融資審査を7年担当(医療機関向け融資専門)。独立後は金融ライターとして10年以上・数千本を執筆。事業再構築補助金の採択・交付を受けて24時間無人のセルフ脱毛サロンを開業・運営中。飲食店の開業・業態転換も経験。「貸す側」「借りる側」「補助金を使う側」の3つの立場を実体験した視点で解説しています。保有資格: FP2級/日商簿記2級/証券外務員。